京都市右京区の妙心寺の境内に退蔵院という塔頭(たっちゅう)が建っています。
退蔵院は、普段から拝観可能で、余香苑(よこうえん)と呼ばれる四季折々の風景を楽しめる庭園があります。
また、元信の庭と通称される退蔵院庭園もあり、こちらは、1年を通して大きく景観が変わることがない枯山水庭園です。
今回の記事では、退蔵院庭園を紹介します。
南庭
JRの花園駅から、北東に5分ほど歩くと妙心寺に到着します。
そして、妙心寺の境内を北西に少し進んだところに退蔵院が建っています。
退蔵院の山門をくぐり拝観受付で、拝観料を納め、順路に従い本堂の方丈に向かいます。
退蔵院庭園は、この方丈を囲むように南庭、西庭、北庭から構成されています。
築庭したのは、室町時代の絵師の狩野元信です。
ゆえに元信の庭と呼ばれているんですね。
方丈の正面に造られた南庭は、一面にコケが張り詰められており、アカマツ1本が植えられている簡素な庭園です。
妙心寺は臨済宗という禅寺で、このような南庭の造りは、禅院の方丈前庭に多く見られます。
落ち着きのある檜皮葺の屋根の方丈とコケが敷かれた南庭は、派手さがなく、とても調和しています。
夏になると、方丈の前にハスのプランターが並ぶこともあり、簡素な南庭がこの時は華やかになりますよ。
西庭
元信の庭の主庭となっているのが、方丈の西側に造られた西庭です。
通常は、方丈の脇から覗き見るようにしか、西庭は鑑賞できません。
西庭は、周囲を常緑樹が囲む枯山水庭園で、絵画的な構築の鑑賞本位の庭園となっています。
そのため、西庭の中を歩くことはできません。
枯山水は、水を用いずに石や砂で山水を表現した庭園です。
西庭も、一切水は使われておらず、砂と石のみで水の流れが表現されています。
池の中央に中島を配した亀島、西側に三導石、南西部に蓬莱島、手前に鶴島があります。
北西築山の奥には、立石による段落ちの枯滝を組み栗石を敷いて渓流を表現しています。
普段は、方丈の中に入れないのですが、たまに方丈に上がれることもあります。
方丈の中から見た西庭。
方丈からだと、中島の岬に渡された石橋を近くに見ることができます。
白砂の上に豪快に組まれた石、ところどころに見られる植え込み。
一年中見ることができるこの景色は、「不変の美」を求めたものと考えられています。
このような庭園の造りは、絵師ならではの感性なのかもしれませんね。
北庭
北庭は、普段は見ることができないのですが、こちらも方丈に上がれるときには鑑賞できます。
北側には書院、東側には方丈と書院をつなぐ廊下があり、北庭は中庭のような感じになっています。
全体的にコケの面積が広く、その上に木々が植えられているため、方丈から書院が見えにくくなっています。
北庭の東側は、白砂となっていて、その上にぽつぽつと石が置かれています。
西庭の豪快さとは対照的で、割と質素に見えます。
余香苑が、四季の移ろいを感じられるのに対して、元信の庭はいつでも変わらぬ景色を見せてくれますから、その鑑賞に季節を問いません。
元信の庭は、国の史跡名勝に指定されているので、退蔵院に参拝した時には、じっくりと見ておきたいですね。
なお、退蔵院の詳細については以下のページを参考にしてみてください。