お寺の建物には、いろいろな名前がついています。
阿弥陀堂、釈迦堂、御影堂、金堂など。
よく聞く名前の建物もありますが、特定の宗派でしか見ることがない建物や宗派が異なると呼び名が変わる建物もあります。
例えば、臨済宗や曹洞宗といった禅寺にある法堂(はっとう)は、他の宗派では講堂と呼ばれています。
ここでは、京都にある臨済宗のお寺の法堂をいくつか紹介します。
相国寺の法堂
法堂は、住持が修行僧に教えを伝えるために使われる建物のことで、鎌倉時代初期に禅宗が宋から日本に伝えられた際に法堂も伝えられました。
京都市上京区の相国寺に建つ法堂は、慶長10年(1605年)に豊臣秀頼の寄進により再建されたものです。
現存する法堂建築としては最古のもので、安土桃山時代を代表する臨済宗の建築物の一つです。
正面が28.72メートル、側面が22.80メートルある大きな法堂は、屋根が二重になっています。
外から見ると、建物の中は、2階建てのように思えますが、1階しかなく天井が非常に高いです。
一番上の屋根は本物の屋根ですが、その下の屋根は裳階(もこし)と呼ばれるものです。
裳は、古代の女性が腰から下にまとっていた衣服だったことから、裳階は飾りとしての屋根を意味します。
正面の左右には、炎をかたどった花頭窓が見られます。
内部には須弥壇があり、中央には本尊の釈迦如来、脇持は左に阿難尊者(あなんそんじゃ)、右に迦葉尊者(かしょうそんじゃ)の像が祀られています。
また、天井は板を平面に張った鏡天井で、狩野光信筆の蟠龍図が描かれています。
この蟠龍図は、鳴き龍とも呼ばれており、堂内の中央付近で柏手をパンと打つと、音が反響してグルグルグルと鳴ります。
同様の鳴き龍は、北区の大徳寺にもあり、やはり、柏手を打つと音が反響し龍が鳴いているように聞こえます。
法堂は、特別公開されることがあるので、その時には柏手を打って反響する音を聞いてください。
南禅寺の法堂
京都市左京区の南禅寺も臨済宗のお寺で、境内に法堂が建っています。
外観は相国寺と同じような感じで、屋根が二重なのに内部は1階だけで、正面左右に花頭窓が見られます。
内部の須弥壇には中央に本尊の釈迦如来、右側に文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、左側に普賢菩薩(ふげんぼさつ)が祀られています。
また、床は一面の敷瓦になっています。
南禅寺の法堂は、相国寺と同じく豊臣秀頼が慶長11年に寄進したものでしたが、明治26年(1893年)に火災で焼失したため同42年に再建されています。
鏡天井には、今尾景年作の幡龍が描かれおり、参拝者は、中に入れないものの戸の隙間から幡龍を見上げることができますよ。
平成2年(1990年)には、雨漏りがするようになったため、開山大明国師700年大遠忌記念行事として、屋根茸替え工事と敷瓦取り替え工事が行われました。
建仁寺の法堂
京都市東山区の建仁寺には、仏殿兼用の法堂が建ち、拈華堂(ねんげどう)と呼ばれています。
建立されたのは明和2年(1765年)で、外観は、これまで見てきた法堂と同じで、屋根が二枚あるものの内部は1階だけで、正面の左右には花頭窓がついています。
須弥壇には、中央に本尊の釈迦如来、脇持は阿難尊者と迦葉尊者で、相国寺と同じです。
鏡天井には、平成14年に創建800年を記念して小泉淳作画伯作の双龍図が描かれています。
建仁寺の法堂は、いつでも拝観でき、また内部の写真撮影ができるので、双龍図を写すことも可能です。
ちなみに東福寺の本堂も、建仁寺と同じく仏殿兼法堂となっており、天井には堂本印象作の蒼龍図が描かれていますね。
妙心寺の法堂
京都市右京区の妙心寺の法堂も、他の臨済宗のお寺と同じような形をしています。
二重の屋根にもかかわらず1階建てで、正面左右には花頭窓がついています。
建立されたのは明暦3年(1657年)です。
鏡天井には、狩野探幽筆の雲龍図が描かれています。
法堂の拝観はいつでも可能です。
京都には、臨済宗のお寺がいくつかあり、ほとんどの法堂が同じような形をしています。
ここで紹介した以外にも嵐山の天龍寺が臨済宗のお寺ですが、法堂の外観は少し変わっており裳階がありません。
京都の臨済宗の寺院に参拝した際は、ぜひ、法堂も拝観してください。