京都市西京区の嵐山の中腹に建つ法輪寺は、渡月橋から見える多宝塔で有名なお寺です。
法輪寺の本堂に本尊として祀られているのは虚空蔵菩薩です。
この虚空蔵菩薩は知恵を授けてくれることで知られていますが、漆文化の発展にも深い関係があります。
うるしの製法と漆塗りの技法を伝授
漆文化は、日本の芸術を代表するもののひとつですね。
重箱なんかによく使われており、どことなく漆が塗られたものには高級感を感じます。
漆の歴史は古く、平安時代前期までさかのぼります。
文徳天皇の第一皇子の惟喬親王(これたかしんのう)が法輪寺に参籠した時、本尊の虚空蔵菩薩より、うるしの製法と漆塗りの技法を伝授され完成したそうです。
そして、それを日本国中に広めたとのこと。
惟喬親王の参籠満願の日が11月13日だと言われていることから、漆業関係者は、この日を「うるしの日」と定め、毎年、漆業の発展を祈願しています。
境内には、日本精漆工業協同組合と全国漆業連合会が建立した「うるしの碑」が置かれています。
建立された年月日は昭和63年(1988年)11月13日です。
しっかりと、うるしの日に建立していますね。
11月に法輪寺に参拝すると、参道や境内に「うるしの日」と書かれた赤色の幟が何本も立っています。
うるしの日には、漆業界の方々がたくさん参加される「うるし祭り」が催されます。
仕事の技術の上達と業界の発展を祈願した後、狂言の奉納が行われます。
平安時代からの長い歴史を持つ法輪寺ですが、過去には室町時代の応仁の乱や幕末の蛤御門(はまぐりごもん)の変によって焼失しています。
それでも、その都度再興されていることから現在も法輪寺は、嵐山の中腹に建っているんですね。
もしも、こういった戦乱の後に法輪寺が再建されなければ、うるしの碑が、この地に建立されなかったかもしれません。
ちなみに法輪寺は、上記の惟喬親王の故事により漆寺(うるしでら)とも呼ばれています。
また、法輪寺の石段の中ほどには電気と電波の守護神である電電宮社が祀られています。
こうやってみると、法輪寺は漆と言い、電気と言い、現在の日本人の生活に欠かせないものと縁の深い神社だということがわかりますね。
法輪寺を訪れた時には、漆や電気を使えていることに感謝の気持ちをこめてお参りしましょう。
なお、法輪寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。