11月26日。
京都市上京区の京都御所を訪れました。
毎年11月になると京都御所では秋の特別公開「京都御所 宮廷文化の紹介」が催されます。
2025年は11月26日から30日までで、普段公開されていない障壁画、雅楽や蹴鞠の実演、生け花などを見ることができます。
雅楽の実演
地下鉄の今出川駅を出ると南東に京都御苑があります。
京都御苑に入って南東に約5分歩くと京都御所の特別公開の入り口となっている清所門に到着します。
中に入るには、お巡りさんの手荷物検査を受け、無事に通過すると入場許可を得た証明書を首からかけ、いざ拝観。
時刻は午前11時を少し過ぎており、急いで御所内の南東に向かいます。
この日は、10時と11時に雅楽の実演が行われる予定。
演目は青海波(せいがいは)と還城楽(げんじょうらく)。
すでに青海波は終わっていましたが、以前に見たので、まあ良いでしょう。
還城楽は今回初めて鑑賞。
大きな舞台の上を茜色の衣装の上に派手な前掛けのようなものをつけ、顔には天狗のような真っ赤な面をつけた人が演奏に合わせて舞を披露します。

還城楽の上演
御所の説明書によると、還城楽は、中国の西方に住む人が蛇を好物として食べたので、蛇を見つけて喜ぶさまを舞にしたとのこと。
また、唐の時代に玄宗(げんそう)皇帝が戦に勝利し陣営に帰るときに作らせた、めでたい舞ともいわれています。
最初は、動きが小さかったものの、とぐろを巻いた蛇を見つけると、歓喜したように躍動感のある舞に変化。
舞台の前方を右に左に動き、両手を上げたりと全身で喜びを表現していますね。
非常に体力が必要とされる舞とのことですが、確かに15分くらい動き続けていたので、疲労が激しそうでしたよ。
なお、雅楽は28日と30日にも行われます。
また、27日と29日は、10時と11時に蹴鞠の実演もあります。
紫宸殿の高御座
舞楽を観覧した後、最初の方の展示物を素通りしてきたので、入り口付近に戻ろうとしたら係の方に止められました。
一方通行とのことで、戻れないそうです。
失敗したと思ったものの、よく考えれば、最後まで見た後にもう一度、入り口付近に行けば良いだけだと気づき、そのまま順路に従い進むことに。
紫宸殿を囲む塀の東側では、月和未生流(つきのわみりょうりゅう)、嵯峨御流、御室流(おむろりゅう)の生け花を見られます。
これも、特別公開時の定番ですね。
今回は、嵯峨御流の生け花の写真を掲載しておきます。

嵯峨御流の生け花
「凛秋」という作品で、枝には小ぶりな柿の実がいくつも付いていますね。
さらに小さい赤色の実はマンリョウでしょうか。
説明書には、以下のように書かれていました。
長く続いた猛暑から、日々少しずつ日差しが変わり、温度が変わり、色彩が変わり「山粧う」の秋の季節へ。そしていつの間にか「山眠る」の冬の足音がすぐそこに。繰り返す美しい日本式の移ろいの中に幸せを感じ晩秋の世界を挿花します。
11月も終わりに近づいたこの時期にぴったりの生け花ですね。
どことなくもの悲しさが感じられる作品です。
日華門をくぐり、紫宸殿(ししんでん)の前にやって来ました。
人が多くて、さすがに無人の写真は撮影不可能。

紫宸殿
紫宸殿は、御所内で最も格式の高い正殿であり、即位礼などの重要な儀式が行われました。
明治、大正、昭和の天皇の即位礼が、この紫宸殿内で行われています。
また、特別公開の時には、天皇の御座の高御座(たかみくら)、皇后の御座の御帳台(みちょうだい)も展示されます。

高御座
高御座も御帳台も同じような作りですが、御帳台が1割ほど小さくなっているとのこと。
外からだと、高御座と御帳台の全景がわからないのですが、拝観案内の写真を見るとカプセル状になっていましたよ。
紫宸殿の次は、その北に建つ清涼殿へ。
建物の左前には漢竹(かわたけ)が青々とした葉をつけていました。

漢竹と清涼殿
清涼殿は、天皇の日常の住まいで、政事、祭事などの重要な儀式も行われていました。
菅原道真の怨霊が雷を落とした建物としても知られていますね。
装束の展示
紫宸殿の東側の大臣宿所にやって来ました。
こちらでは、装束の展示が見られ、束帯を着るまでの過程を5体の人形を使って解説しています。
まず、紅色の大口袴(おおくちはかま)をはきます。

大口袴
次に表白裏紅の色で作られた表袴(おもてはかま)を大口袴の上にはき、紅色一重の単(ひとえ)を着ます。

表袴・単
さらに下襲(したがさね)と呼ばれる背部の布が長い衣を着ます。
身分が高いほど背部の布が長くなり、この部分が切り離され裾(きょ)となります。
裾は、しっぽのように長く、公家が地面を引きずるようにして歩いているのを時代劇などで見ることがありますね。
完成形がこちら。

縫腋袍
上に袍(ほう)と呼ばれる黒い衣を着用しています。
この展示では、脇を縫い合わせた縫腋袍(ほうえきほう)と呼ばれる文人が身につける袍となっています。
後ろを見ると、石が付いたベルトのようなものが。
これは、束帯を着用するときに、装束が崩れないようにするための石帯(せきたい)という革製の帯です。

石帯
正面からだと袍がふわっとして石帯を隠しており、その存在に気づきにくいですね。
障壁画
特別公開の出口付近では、VRを体験できるテントが設置されていました。
タッチ性のディスプレイが、京都御所内の様子を映し出し、360度様々な角度で現在の御所を見られるようになっていました。
内裏図の比較図の展示もありましたよ。
待ち時間が25分とのことだったので、実際には体験せず、外から覗くだけにしておきました。
VR体験で終了ですが、見忘れていた障壁画を見るために再び入り口付近へ。
今回は、皇后御常御殿(こうごうおつねごてん)の下段の間の襖絵の展示です。
「列女伝 湯妃有莘女(とうきゆうしんじょ)」という作品。

列女伝 湯妃有莘女
全体が金色で、織田信長や豊臣秀吉がお城に使っていたような襖ですが、どことなく柔らかみが感じられ、宮廷の襖絵らしさがありますね。
中国前漢の劉向(りゅうきょう)が、模範や戒めとなる婦女の逸話を収録した『列女伝』巻1「母儀伝」中の「湯妃有莘」の場面を画いたものだそうです。
製作したのは、江戸時代後期から明治時代の画家である鶴澤深真(つるさわたんしん)とのこと。
以上が、今回の特別公開で見た展示物や雅楽の実演でした。
なお、京都御所の詳細については以下のページを参考にしてみてください。