京都を観光する場合、お寺を拝観することが多いと思います。
お寺といっても、宗派が異なっていると、建っている建物にも違いがあるわけで、どこでも同じものを鑑賞できるわけではありません。
私がこれまで京都のお寺に参拝して、立派な建物だなと感じたのは宸殿(しんでん)ですね。
宸殿は、皇室関係者が代々住職を勤めてきた門跡寺院(もんぜきじいん)特有の建物で、格式が高いのが特徴です。
今回の記事では、私がこれまでに見たことがある京都の門跡寺院の宸殿を紹介します。
勧修寺の宸殿
宸殿の中でも、最も外観を見やすいのが勧修寺(かじゅうじ)の宸殿でしょう。
宸殿の「宸」の文字は天子、つまり天皇を意味します。
勧修寺の宸殿は、元禄10年(1697年)に明正天皇の御殿を下賜(かし)されたもので、江戸時代初期の御所の建物です。
宸殿によく見られるのが、格子状になっている蔀戸(しとみど)ですね。
蔀戸は、障子のように横に開くのではなく、上方に跳ね上げるように開きます。
ちなみに蔀戸は、平安時代の貴族の邸宅に採用された寝殿造という建築様式から採用されたと言われています。
この辺りにも、宸殿の格式の高さをうかがえますね。
聖護院の宸殿
京都市左京区の聖護院(しょうごいん)の宸殿です。
聖護院は、修験道のお寺で、後白河天皇の皇子の静恵(じょうえ)法親王が入寺して以来、門跡寺院となりました。
天明の大火(1788年)の時には光格天皇が、また、安政元年(1854年)の御所の火災の時には孝明天皇が、聖護院に避難し仮御所としています。
皇室との関わりの深さがよくわかりますね。
仁和寺の宸殿
仁和寺(にんなじ)の宸殿は、御殿拝観時に鑑賞できます。
下の写真の右に写っているのが、宸殿です。
宸殿からは、白川砂を敷き詰めた簡素な南庭と池泉式の北庭を鑑賞できます。
北庭からは、五重塔を望むことができますよ。
仁和寺には、宸殿の他にも御所から下賜された内裏紫宸殿があります。
それは金堂です。
金堂は、一目見ただけで、その豪華さがわかる建物です。
慶長年間(1596-1615年)に建てられたもので、現存する最古の紫宸殿として国宝に指定されています。
大覚寺の宸殿
京都市右京区の嵯峨御所と呼ばれている大覚寺にも宸殿があります。
大覚寺の拝観は、建物内を回遊することになっているので、外から宸殿の全景を撮影することはできません。
なので、真横から見た写真を掲載します。
大覚寺の宸殿は、後水尾天皇の中宮の東福門院和子(とうふくもんいんまさこ)の宮殿を移築したものと伝えられています。
宸殿の前には、左近の梅と右近の橘が植えられており、京都御所の紫宸殿を彷彿とさせます。
毘沙門堂の宸殿
京都市山科区の毘沙門堂も門跡寺院なので、宸殿があります。
下の写真は桜の時期に撮影したものなので、人がとても多いですね。
桜の奥に写っているのが宸殿です。
毘沙門堂の宸殿は、後西天皇の御所宮殿を皇子の公弁法親王が拝領して移築した建物です、
中は、116面の障壁画で飾られています。
春と秋は、人が多いですが、その他の時期だとほとんど参拝者がいないので、宸殿を見やすいですよ。
青蓮院の宸殿
京都市東山区の青蓮院にも立派な宸殿が建っています。
青蓮院で最も大きな建物が、この宸殿で、大覚寺と同じく東福門院から下賜された建物です。
建物の前には、左近の桜と右近の橘も配されており、いかにも宮中から賜った建物といった感じです。
明治26年(1893年)に焼失していますが、その後再建され、今日に至っています。
妙法院の宸殿
妙法院も京都市東山区に建つ門跡寺院です。
宸殿は、とても大きな建物ですが、屋根が檜皮葺なので、それほど重厚感は感じません。
妙法院の宸殿内仏間には、中世以降の歴代天皇、皇后の位牌が安置されており、前3代の両陛下の祥月にはねんごろに法要が営まれるとのこと。
境内に自由に入ることができるので、最も見やすい宸殿です。
とは言え、宸殿が建っている地帯に常に入れるのかどうかわかりません。
以前は、門が閉まっていて入れなかったのですが、最近は、参拝しても閉まっていることがないですね。
三千院の宸殿
京都市左京区の大原に建つ三千院も門跡寺院なので、宸殿があります。
宸殿の周りは木々が多いので、全景を写真に収めるのは難しいです。
三千院の宸殿は、大正15年(1926年)に建てられたものなので、その他の宸殿と比較すると新しいですね。
中には、薬師瑠璃光如来像、救世観音半跏像、不動明王立像が安置されています。
なお、青蓮院、妙法院、三千院は、天台宗の三門跡寺院と呼ばれています。
以上が、私がこれまでに拝観したことがある京都の宸殿です。
建物の全景をしっかりと見たいなら勧修寺の宸殿がおすすめです。見た目も豪華ですからね。
青蓮院も、外から見るだけでなく建物内部に入ることができるので 、宸殿を拝観したい方にはおすすめですよ。