京都には、たくさんの日本庭園があります。
その多くは、お寺や神社にあり、ほとんどのところで、拝観することができます。
庭園には、いろいろと種類がありますが、山々に囲まれた京都では、遠山や自然の景色をあたかも庭園の一部のように取り込んでしまう借景という技法がよく使われています。
借景庭園の魅力は、近代的な建物が視界に入らないようになっていることではないでしょうか。
こういう庭園を鑑賞していると、まるで遠い昔の時代にいるような気分になりますね。
今回の記事では、京都にある借景庭園をいろいろと紹介します。
比叡山
京都の借景庭園でよく利用されるのが比叡山です。
比叡山は、とても大きな山なので、遠くからでも、その景色を庭園に取り込むことができますね。
円通寺
比叡山を借景として利用している庭園の中で、最も雄大さを感じるのが円通寺の枯山水庭園です。
円通寺が建つ地は、江戸時代に後水尾上皇が、比叡山を最も美しく見える場所として幡枝離宮を造営したところです。
その姿は、都の富士と呼ばれるほど見事で、いつまでも見続けていたくなります。
庭の奥に数本の木が植えられており、その間からしか比叡山を望むことができないのも、雄大さを感じさせる理由なのかもしれません。
正伝寺
正伝寺の獅子の児渡しの庭園も比叡山を借景としています。
上の写真は、曇っている時に撮影したものなので、比叡山が見えにくいですが、晴れていると、中央に見えます。
白砂とツツジで造られた質素な庭園が、比叡山を引き立てています。
東山
京都の東に連なる東山三十六峰は、借景に利用するには、格好の山と言えます。
京都市内に東向きに造られた庭園なら、多くの場合、東山三十六峰を望むことができますね。
高台寺
東山の緩やかな斜面に境内が造られた高台寺は、まるで東山そのものが境内のように思えます。
下から東山を見上げるように眺めるのも良いですが、東山から境内を眺めるのも格別です。
金地院
金地院は、方丈の南に枯山水の鶴亀の庭が配されています。
庭の奥には大刈込があることから、外の景色は見えません。
方丈から左を見ると、大刈込の上に東山を望むことができ、まるで、遠くまで大刈込が続いているかのような錯覚を覚えます。
勧修寺
勧修寺(かじゅうじ)は、東山の東側にあります。
そのため、他の庭園とは異なり、東山を西から望むことになります。
庭園に配された氷室池(ひむろのいけ)の周囲には、たくさんの木が植えられており、それがまるで、遠く東山まで続いているように見えます。
近くには、交通量の多い道路が走っているにも関わらず、勧修寺の庭園に入ると、まるで、自然の中にいるような静けさを味わうことができます。
正法寺
正法寺は、京都市西京区にあるお寺で、庭園は、大小さまざまな石を鳥獣に見立てて置いていることから、鳥獣の石庭と呼ばれています。
正法寺が建つのは、京都市の西の端。
そこから遠く京都市の東に連なる東山三十六峰を借景として取り込んでいます。
現在は、背の高いビルが視界に入ってしまいますが、昔は、そのようなことはなかったのでしょうね。
大寧軒
南禅寺の近くに建つ大寧軒は、南禅寺の塔頭(たっちゅう)であった大寧院の跡地に明治末期に造られた庭園です。
東山三十六峰のひとつの大日山を借景として取り込んでいます。
琵琶湖疏水から流れる水によって造られた池越しに大日山を眺めるのがおすすめです。
なお、大寧軒は通常非公開です。
嵐山
京都でも人気の景勝地嵐山。
春に秋に違った景色を作り出す嵐山を借景として取り込んだ庭園は、四季折々の風景を楽しませてくれます。
天龍寺
天龍寺の曹源池庭園は、嵐山が最も見やすい庭園です。
池越しに眺める嵐山。
それは、人が作り出した芸術と自然が織りなす風景との融合ですね。
春夏秋冬、1年を通して楽しめる庭園です。
宝厳院
天龍寺の近くに建つ宝厳院(ほうごんいん)の獅子吼(ししく)の庭も嵐山を借景として取り込んでいます。
ただ、宝厳院は、庭園内の木々が高く、嵐山を遮るような格好となっているところが多いので、庭園とともに嵐山を眺めにくくなっています。
鹿王院
鹿王院(ろくおういん)は、客殿の南に枯山水庭園が広がっています。
おすすめの景色は、舎利殿越しに眺める嵐山。
観光地の嵐山からやや離れた地に建つ鹿王院からだと、人が少ないので、静かに嵐山を眺めることができます。
北山
京都市の北にある北山を借景とした庭園もいくつかあります。
金閣寺
北山で最も有名な観光名所は、何と言っても金閣寺です。
金閣寺の庭園は、衣笠山を借景としており、晴れた日には、池、金閣、山、青空が見事に調和した景色を見ることができます。
境内がとても広く、どこを見ても自然の景色しか見えません。
光悦寺
光悦寺の庭園は、南にある鷹峯を借景として取り込んでいます。
庭園と鷹峯の間は谷となっているので、庭園から鷹峯を眺めていると、まるで宙に浮いているような錯覚を覚えます。
秋の紅葉の時期の眺めは特に見事です。
その他
比叡山、東山、嵐山、北山以外を借景として取り込んでいる庭園もいくつかあります。
常照皇寺
常照皇寺は、自然に囲まれたお寺なので、その庭園も自然を借景として取り込んでいます。
どこを見ても自然がいっぱいで、山の中のお寺といった印象がとても強いですね。
法金剛院
京都市右京区の法金剛院は、花の寺として知られており、四季折々の花を楽しませてくれます。
庭園の北には、五位山という丘のような山があります。
それほど存在感のある山ではありませんが、交通量の多い道路に面しているお寺なので、外の騒がしさから意識を反らしてくれる重要な存在と言えますね。
他にも借景庭園はたくさんありますが、代表的なところをいくつか紹介しました。
京都で、借景庭園を拝観しようと思っている方は、この中から選んでみてはいかがでしょうか。