京都市の4つの五重塔

京都にある五重塔と聞いて、すぐに思い浮かぶのが東寺の五重塔ではないでしょうか。

東寺の五重塔は、京都駅近くに建っていて、新幹線などの電車からも見ることができるので、多くの方に馴染みがある五重塔だと思います。

そのため、「五重塔=東寺」というイメージを多くの方が持っていることでしょう。

しかし、京都市には、東寺の他に右京区の仁和寺、伏見区の醍醐寺、東山区の法観寺(八坂の塔)と合計4つの五重塔があります。

そこで、今回は、京都市の4つの五重塔について簡単に紹介します。

東寺の五重塔

東寺の五重塔は、天長3年(826年)に弘法大師空海が創建に着手したことに始まります。

東寺の五重塔

東寺の五重塔

竣工は元慶7年(883年)です。

空海が創建に着手して千年以上も経っていることから、さすがに現在まで無事ではなかったようで、過去に4回も焼失しています。

  • 天喜3年(1055年)に焼亡したのち応徳3年(1088年)に再建
  • 文永7年(1270年)に焼亡したのち永仁元年(1293年)に再建
  • 永禄6年(1563年)に焼亡したのち文禄3年(1594年)に再建
  • 寛永12年(1635年)に焼亡したのち同21年に再建

現在の五重塔は、寛永21年(1644年)に4度目の再建がなされた時に徳川家光が寄進したもので5代目になります。

東寺の五重塔の特徴は、やはりその高さにあります。

現存する日本の古塔中最高の塔で、高さは55メートルもあります。

五重塔の前には瓢箪池がありますが、この池は、かつて五重塔が傾いた時に元に戻すために掘ったとの言い伝えがあります。

東寺の五重塔は、年に何度か初層内部の特別公開が行われます。

初層の中央には、大日如来に見立てた心柱が最上層まで伸び、その周囲の須弥壇上には、阿閦如来(あしゅくにょらい)、宝生如来(ほうしょうにょらい)、阿弥陀如来、不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)の金剛界四仏と八大菩薩が安置されています。

また、初層内部の四天柱には金剛界曼荼羅諸尊が描かれており、講堂内の立体曼荼羅と比較しながら、内部を見ると、より興味がわくはずです。

外陣周りは、四方の扉の内面に護法八方天、扉の左右の柱に八代龍王、周囲の壁の上段に真言八祖像、下段に蓮池が、それぞれ描かれています。

そして、天井は折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう)になっており、大きな四角の中に小さな四角がいくつも見えます。

初層内部は、かつて極彩色だったようですが、今は色が落ちて薄暗い空間となっています。

東寺には、五重塔の初層内部が特別公開されている時にお参りしたいですね。

また、東寺は、春の桜秋の紅葉もきれいで、桜や紅葉と一緒に眺める五重塔も見事です。

東寺の五重塔は、京都駅から最も近い場所にあるので、京都旅行の際は必ず見ておきたいですね。

醍醐寺の五重塔

醍醐寺の五重塔は、醍醐天皇の冥福を祈るために第1皇子の朱雀天皇が承平6年(936年)に着工し、第2皇子の村上天皇の天暦5年(951年)に完成しました。

醍醐寺の五重塔

醍醐寺の五重塔

現存する京都府の五重塔では最古のものであり、木造建築物としても京都府下で最も古い建物です。

高さは38メートルで、東寺の五重塔の4分の3ほどですね。

屋根の上の相輪は、約13メートルあり、五重塔の高さの約3分の1を占めています。

通常は、五重塔を間近で見上げるので、相輪が高さの3分の1もあるようには見えませんが、遠くから見ると相輪の大きさがよくわかります。

他の五重塔が黒色なのに対して、醍醐寺の五重塔は朱色が目立ちます。

また、屋根の幅は、一番下が最も広く、上に行くほど狭くなっていくので、全体的に細長い三角形に見えるのも醍醐寺の五重塔の特徴と言えます。

五重塔の周囲には、何も建物がなく、広々とした敷地にドーンと建っています。

境内を歩いていると、突如出現したかのような五重塔にあっけなく感じる人もいれば、驚く人もいることでしょう。

五重塔の初層内部には彩色壁画が残されており、両界曼荼羅の諸尊や真言八祖像が描かれています。

通常は、五重塔内部を見ることはできませんが、毎月29日の10時30分と13時30分から行われる「五重大塔開扉 納経法要」の際に写経奉納された方は、五重塔内部を四方の扉の外側から拝観可能です。

五重塔内部の拝観には、拝観料の他に別途写経奉納料1,000円が必要です。

仁和寺の五重塔

仁和寺の五重塔は、寛永21年に建立されました。

仁和寺の五重塔

仁和寺の五重塔

高さは36メートルです。

東寺の五重塔と同じ時期に建立されたことから、建築様式もよく似ており、各層の屋根の幅がほぼ同じとなっています。

これは、江戸時代の特徴的な建築様式だそうです。

仁和寺は、御室桜も有名なお寺です。

御室桜は遅咲きの品種で、京都のお花見シーズンが終わりに近づく頃に満開となります。

この満開の御室桜越しに見る仁和寺の五重塔は、まるで雲の上にそびえ建っているかのような雄大さがあります。

京都市内で御室桜と五重塔を一緒に見ることができるのは、仁和寺だけです。

また、御殿の庭園越しに見る五重塔も風情があるので、仁和寺に参拝した時は、御殿も拝観しておきたいですね。

五重塔内部には、大日如来が祀られており、その周囲に四方仏を安置しています。

中央の心柱を囲むように四本の天柱が五重塔を支え、柱や壁面には真言八祖、菊花文様などが描かれています。

五重塔の内部は通常非公開ですが、特別公開が行われることがありますよ。

八坂の塔

法観寺の五重塔は、八坂の塔と呼ばれて親しまれています。

八坂の塔

八坂の塔

高さは46メートルあります。東寺の五重塔に次いで高いですね。

創建年代は、4つの五重塔の中で最も古く、崇峻天皇2年(589年)に聖徳太子が建立し、塔内に仏舎利を納めたのが始まりとされます。

創建には、渡来系豪族の八坂氏が関わったと伝えられています。

治承3年(1179年)に清水寺八坂神社の争いに巻き込まれて炎上。

源頼朝によって再建されたものの、永享8年(1436年)にも炎上して、同12年に今度は足利義政によって再建されています。

八坂の塔は、幾度となく火災で焼失し、そのたびに再建されて、現在の姿となっているんですね。

テレビのドラマなどで京都の町並みが映る時に五重塔も映っていることがありますが、多くの場合は、法観寺の五重塔です。

山から見下ろすような角度で映る五重塔は、ほぼ法観寺の五重塔です。

そのため、八坂の塔は、京都市内で最も見慣れた五重塔かもしれませんね。

また、他の五重塔とは異なり、八坂の塔は東山の街中に建っているため、様々な角度から眺められるのも、特徴の一つです。

見上げる五重塔、見下ろす五重塔、平行に見る五重塔と、東山を歩いていたら、あらゆる角度から五重塔を見ることができますよ。

1日で4つの五重塔を観ることができるか?

以上、簡単に4つの五重塔を紹介しました。

京都観光の目的の一つとして、4つの五重塔を訪れてみようとお考えの方も多いと思います。

そこで、1日で4つの五重塔を周る方法を考えてみました。

まず、順番としては、拝観時間が午後5時くらいまでと決まっている東寺、醍醐寺、仁和寺を優先し、最後に八坂の塔に訪れるのがいいと思います。

特に、八坂の塔以外は世界遺産に登録されているので、これらは何としても観ておきたいところです。

また、八坂の塔が建っている東山区は、頻繁に夜のライトアップを行っているので、夕方以降でも八坂の塔に訪れることはできます。

では、以下に4つの五重塔を周る手順を記しておきます。

京都駅から東寺へ

京都駅から東寺へは、近鉄電車に乗車して東寺駅で降りても、京都駅から徒歩で行っても約20分ほどかかります。

拝観料は500円ですが、五重塔初層内部が公開される場合は800円です。

拝観時間はいくらあっても足りないくらいなので、1時間と決めておくといいでしょう。

東寺から醍醐寺へ

東寺の拝観の後は、20分かけて京都駅まで戻ります。

京都駅まで戻ったら、地下鉄烏丸線に乗車し烏丸御池駅で下車します。ここまで約5分。

烏丸御池駅からは、地下鉄東西線に乗車し、醍醐駅で下車します。乗車時間は約21分です。

京都駅から醍醐駅までの運賃は330円です。

醍醐駅からは、約13分ほど歩くと醍醐寺に着きます。

拝観料は通常1,000円ですが春季は1,500円です。上醍醐と下醍醐の両方を拝観すると2時間以上はかかってしまうので、こちらも五重塔がある下醍醐を1時間だけ拝観することにしましょう。

醍醐寺から仁和寺へ

醍醐寺の拝観を終えたら次は仁和寺です。

醍醐寺から13分歩いて醍醐駅へ行き、地下鉄東西線に乗車し、三条京阪駅で下車します。乗車時間は、約17分です。

醍醐駅から三条京阪駅までの運賃は290円です。

三条京阪駅からは、市バス59系統に乗車し、御室仁和寺で下車してください。乗車時間は約45分で、運賃は230円です。

仁和寺の入山料は春は500円ですが、その他の季節は無料です。仁和寺御所庭園(御殿)を拝観する場合は別途800円かかります。こちらも拝観時間は1時間としておきましょう。

仁和寺から八坂の塔へ

仁和寺の後は、いよいよ最後の八坂の塔です。

御室仁和寺から市バス59系統に乗車し、烏丸今出川で下車してください。乗車時間は約26分、運賃は230円です。

烏丸今出川からは、地下鉄今出川駅に移動し、烏丸線に乗車してください。そして、五条駅で下車します。乗車時間は約8分で、運賃は260円です。

五条駅からは、市バス停烏丸五条に移動し、80系統に乗車します。約10分で清水道に着きますので、そこで下車し、約5分ほど歩くと八坂の塔に着きます。運賃は230円です。

八坂の塔は、特に拝観料を納めなくても観ることができます。また、五重塔しかないので、15分ほど眺めれば、満足できると思います。

以上、所要時間は5時間15分ほどです。乗換の待ち時間と昼食時間を2時間とすると約7時間かかりますね。なんとか1日で4つの五重塔を周ることができそうです。

運賃は、合計1,570円ですね。

ちなみに地下鉄と市バスと京都バスを1日利用できる「地下鉄・バス一日券」が京都駅で1,100円で購入できるので、こちらを利用した方がお得ですね。

電車やバスの割引チケットの情報については、以下の記事を参考にしてみてください。

また、公共交通機関ではなく、車を使って京都市の4つの五重塔を訪ねるなら、カーシェアリングを利用するのが便利です。

京都市内は道路が混むので、バスの場合、待ち時間も入れると、かなりの時間がかかってしまいます。

でも、京都市内に車で行くのは、それまでに渋滞に巻き込まれて無駄な時間を過ごしてしまう可能性があるので、東寺を拝観後にカーシェアを利用し、醍醐寺、仁和寺、八坂の塔の順番で廻るのが良いでしょう。

京都駅や近鉄東寺駅にカーステーションがあるので、自動車を借りるのにそれほど時間もかかりません。

五重塔に興味がある方は、この記事で紹介した廻り方をお試しください。

更新履歴

  • 2021年9月30日に10月1日以降、地下鉄・バス一日券が1,100円に値上げするため情報を修正しました。
  • 2019年10月1日に一部の運賃を修正しました。
  • 2018年2月8日追記
    2018年3月17日より京都観光1日乗車券が1,200円から900円に値下げし、名称が「地下鉄・バス一日券」に変更されます。これまでの地下鉄、市バス、京都バスに加え、山科・醍醐地域の京阪バスにも乗車できるようになりました。これに合わせて本文の交通費も修正しています。
  • 2014年8月21日に運賃と京都観光1日乗車券の料金を修正しました。