願い事を叶えてくれる嵯峨野の油掛地蔵

京都市右京区の嵯峨野は、旅行者に人気の観光地です。

その理由は、やはり、京都らしいお寺や神社が多く、自然の景観が今も残っていることなのでしょうね。

ただ、人気がある観光地と言っても、観光客が多いのは渡月橋の辺りで、そこから少し離れると観光客の姿が一気に減ります。

でも、人が少ないところでも、意外と興味深いお寺や神社があるものです。

油掛地蔵も、そのひとつですね。

実は阿弥陀さまだった

油掛地蔵が祀られているお堂は、JR嵯峨嵐山駅から北東に5分ほど歩いた辺りに建っています。

民家の一角にひっそりと建っているので、おそらく、事前に知識を仕入れていなければ素通りしてしまうのではないでしょうか。

下の写真に写っているのが、油掛地蔵が祀られている小さな祠です。

小さな祠

小さな祠

油掛地蔵と呼ばれているのは、その名のとおり、油をかけてお参りする風習が由来です。

油と言っても、昔は現代のように石油がなかったので、行灯などに使った菜種油をかけてお参りしたようです。

菜種油は、庶民にとっては貴重品です。

その貴重な菜種油の残りを数滴かけてお参りするのですから、ここぞという時にお地蔵さまに願い事をしたのかもしれませんね。

長い期間、多くの参拝者に油をかけられてきたせいか、お地蔵さまの表面が黒くなっていて、表情もわかりにくくなっていました。

油掛地蔵

油掛地蔵

お堂の正面に座っていらっしゃるお地蔵さま。

でも、近年の調査で、油掛地蔵はお地蔵さまではなく、石造の阿弥陀坐像だと判明しました。

よく参拝されていた方は、この事実を知った時、驚いたでしょうね。

今までお地蔵さまだと思って油をかけていたのに実際には阿弥陀さまに油をかけていたのですから。

現在でも、油をかけてお参りをしている方がいらっしゃるのかどうかはわかりません。

もしも油をかけるとすると、オリーブ油やごま油を持参するのでしょうか。

嵯峨野の油掛地蔵と同様のお地蔵さまは、京都市伏見区の西岸寺にも祀られています。

こちらは、山崎の油売りがお寺の前で油をこぼしてしまい、仕方なく残った油をお地蔵さまにかけてお参りしたら、その後、商売がうまくいくようになったと伝えられています。

そのため、商売繁盛のお地蔵さまとして今も信仰されています。

嵯峨野と伏見の油掛地蔵の両方にお参りしておくと、大いにご利益を授けてもらえるかもしれませんね。

でも、嵯峨野と伏見は結構離れているので、同じ日に参拝するのは厳しいのですが。

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