2月中旬に京都市右京区の御室(おむろ)に建つ転法輪寺を訪れました。
1月10日から3月18日まで京の冬の旅の非公開文化財特別公開が実施されており、転法輪寺では大きな御室大仏や裸形(らぎょう)の阿弥陀如来立像などを鑑賞できます。
当寺では、他にも多くの宝物が展示されており、どれも興味深いものばかりでした。
今回の記事では、転法輪寺で見た宝物の一部を紹介します。
本堂に展示されている宝物
転法輪寺には、京福電車の御室仁和寺駅から北に10分ほど歩くと到着します。
本堂西側の壁に掲げられているのは、金糸で刺繍された浄土宗紋と法輪紋です。
太さ約2mmの極太金糸で縫われている2つの紋は、もともとは本尊前の大前机の打敷だったそうです。
経年劣化が激しくなったため、打敷を新調したのですが、織物屋さんがこれだけの大きさと厚みがある物は大変貴重だと述べ、後世に残すため裏打ちをし、額装して本堂に掲げることにしたそうです。
本堂の西側にかかる大涅槃図(だいねはんず)は、縦5.3メートル、横4.9メートルもあるのですが、その裏打ちとして使用されていた江戸時代の着物も展示されていました。
着物を反物に戻して使用したそうですが、全てに南無阿弥陀仏の名号が書かれています。
下の写真の金板には、大般涅槃経が1巻分彫られています。
真鍮製とのことですが、金色に輝いていましたよ。
本堂の東側では、裸形阿弥陀如来立像の袴と厨子(ずし)に飾られていた戸帳が展示されていました。
これらは大正時代以前に使用されていたそうです。
客殿に展示されている宝物
本堂を出て、廊下を渡り東側に建つ客殿に向かいます。
本堂と客殿の間には、白砂とコケが敷かれた庭園が配されていました。
客殿の中にも多くの宝物が展示されています。
下の写真に写っているのは、二十五聖衆来迎図です。
和田東岳氏の制作で、昭和9年(1934年)に転法輪寺に寄贈されました。
転法輪寺を開いた関通上人の行業記の版木もありました。
版木は数十枚現存しており、そのうちの2枚が転法輪寺に保存されています。
南無阿弥陀仏と書かれた掛け軸は、山下現有僧正直筆の名号です。
48の丸で囲まれた部分があるそうですよ。
確かに文字の中に丸がいっぱいあります。
48個の丸を数えることができるでしょうか。
こちらは、山下現有上人が90歳の時に書かれた浄土宗開宗の起因となった御文です。
山下現有僧正は、晩年は目が見えなかったそうですが、掛け軸にはしっかりとした文字が書かれています。
客殿の部屋の隅に小さな木の破片も展示されていました。
これは、ムクの木で、法然上人の生誕地に熊谷直実が建立した誕生寺に残っていたムクの断片とのこと。
法然上人が誕生する時、白い幡が二流れ飛んできて屋敷内のムクの木にかかり、美しく輝いていたと伝えられています。
転法輪寺に伝わるムクの断片は、山下現有僧正の遺品だそうです。
ここで紹介した他にも、たくさんの寺宝が転法輪寺に伝わっており、京の冬の旅の期間中は展示されています。
どれも珍しいものばかりですから、ぜひ転法輪寺に足を運んで実物をご覧になってください。
なお、転法輪寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。