京都の建物を拝観すると、床がキュッキュッと鳴ることがあります。
お寺にしても神社にしても、古い建物なので、床が傷んでいるんだろうなと思ってしまいますが、実はこのキュッキュッと鳴る音は、建物の劣化によって起こっているわけではありません。
実は、建築時にわざとこのような音が鳴るように設計されているのです。
こういったキュッキュッと鳴る床は鴬張りと呼ばれています。
今回の記事では、鴬張りの廊下がある京都の建物をいくつか紹介します。
二条城
鴬張りの廊下が最も有名なのは二条城の二の丸御殿ですね。
二条城は世界遺産に登録されているので、いつも拝観者が多いです。
そのため、二の丸御殿の中は、常にキュッキュッという音が聞こえますね。
廊下を鴬張りにする理由は、敵の侵入を素早く察知するためです。
夜中に忍者が忍び込むと、廊下からキュッキュッと音が鳴るので、すぐに捕えることができるわけです。
現代でいうと、警報機のような役割を果たしていたのが鴬張りの廊下だったんですね。
知恩院
お城だけでなくお寺にも鴬張りの廊下があります。
京都市東山区の知恩院の御影堂、集会堂、大方丈、小方丈をつなぐ廊下が鴬張りとなっています。
知恩院は、徳川家と縁の深いお寺で、大方丈は徳川将軍家の公務のために使用されました。
大方丈の造りは二条城と同じ書院造となっています。
なお、知恩院の鴬張りの廊下は、通常拝観が行われていませんので、実際にキュッキュッと鳴る音を聞く機会はめったにないでしょうね。
大覚寺
京都市右京区の大覚寺の廊下も鴬張りとなっています。
大覚寺は江戸時代に再建されました。
廊下が鴬張りとなっているだけでなく、庭園にも白砂が敷き詰めてあるので、外部からの侵入がわかりやすくなっています。
さらに欄干を外して武器として使うことができるようになっており、くせ者の侵入に対してかなり慎重に造られています。
大覚寺は、割と風流なお寺なのですが、意外と警備態勢が整っていたわけですね。
観智院
京都市南区の東寺の北に建つ観智院にも鴬張りの廊下があります。
観智院が創建されたのは江戸時代初期です。
鴬張りの廊下は、他の建物と同じように防犯のための仕掛けです。
また、天井が紙でできており、上からの侵入を防止できるようになっています。
観智院は、他にも防犯のための備えがいろいろとありますよ。
等持院
京都市北区の等持院の方丈の縁側の板も鴬張りとなっています。
等持院の方丈は、元和2年(1616年)に福島正則が海福院の方丈として建立したものを文政元年(1818年)に移築したものです。
襖絵は狩野典以の作です。
等持院の鴬張りの廊下は、キュッキュという音が、他のところと比較して大きいように思います。
なので、等持院の方丈の廊下を歩いていると、意図的に音がする床にしたんだということが理解できます。
この記事で紹介した鴬張りの廊下がある建物に共通しているのは、江戸時代に建てられたということです。
戦国時代が終わって泰平の世の中に変わりつつあっても、防犯に関しては意識が高かったんですね。
この記事で紹介した以外にも鴬張りの廊下は、京都にいくつもあります。
廊下がキュッキュッと鳴った時は、その音を味わうようにゆっくりと歩いてみてください。
更新履歴
- 2014年4月2日に等持院を追加しました。