地獄の閻魔大王が祀られている2つのお寺

「嘘をついたら地獄の閻魔さまに舌を抜かれますよ」

子供の時にこんなことを大人から言われたことがある方は多いはず。

だから、閻魔さまは、とても怖い存在だという印象があるでしょう。私もそう思っています。

そして、なんとなく悪そうな印象もあるので、閻魔さまは仏さまが祀られているお寺にはいないと思い込んでしまいますが、実は、京都には閻魔さまを祀ったお寺が上京区と東山区の2ヶ所にあります。

上京区のお寺は引接寺(いんじょうじ)で、東山区のお寺は六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)です。

引接寺

引接寺は、千本ゑんま堂の名で親しまれているお寺です。

この界隈に住んでいる方は、きっと当たり前のように閻魔さまにお参りをしているでしょうから、お寺に祀られていても違和感を感じないでしょうね。

千本ゑんま堂と呼ばれる引接寺

千本ゑんま堂と呼ばれる引接寺

引接寺の創建は平安時代で、開基は小野篁(おののたかむら)です。

小野篁は、昼は宮中に仕え、夜は閻魔之廰(えんまのちょう)に仕えていたという伝説が残っています。

その小野篁が、朱雀大路頭(すざくおおじかしら)に閻魔法王の像を安置したのが当寺の始まりと伝えられています。

現在祀られている閻魔さまは、長享2年(1488年)に造立されたもので、高さは2.4メートルもあります。

その顔は、震え上がりそうになるほど恐く、嘘をついたら本当に舌を抜かれて地獄に落とされるのではないかという迫力がありますね。

下の写真に写っているのは、引接寺の入り口近くにある閻魔さまの人形です。

閻魔法王の人形

閻魔法王の人形

こちらも怒ったような顔はしていますが、どことなく親しみを持てる表情なので、それほど怖くはありません。

六道珍皇寺

閻魔さまが祀られているもう1ヶ所のお寺、六道珍皇寺は、この世とあの世の境目といわれる六道の辻に建っています。

創建について詳しいことはわかっていませんが、ここも小野篁と関係があるお寺です。

先にも述べたように小野篁は、夜は閻魔之廰に仕えていました。

でも、どうやって彼は閻魔之廰に行ったのでしょうか。

その答えが、六道珍皇寺にあります。

境内には、小野篁が冥土に通うために使用したと伝えられている井戸が残っています。

ここから毎晩、冥土に通っていたんでしょうね。

今も冥土につながっているのかどうかはわかりません。

肝心の閻魔さまはどこに祀られているのかというと、本堂の右前にある閻魔堂と呼ばれるお堂です。

六道珍皇寺の閻魔堂

六道珍皇寺の閻魔堂

このお堂に安置されている閻魔さまの像は、小野篁の作と伝えられています。

実際に閻魔さまを見ている小野篁が造ったのなら、六道珍皇寺に祀られている閻魔像が、最も本物の閻魔さまに似ているのでしょうね。

閻魔堂は、普段は閉じられていますが、参拝者は外からでも閻魔さまを拝めるようになっています。

で、この閻魔堂にはもう1体、像が安置されています。

その像は、小野篁像です。

閻魔さまと一緒に安置されている小野篁像を見ていると、本当に閻魔さまに仕えていたのではないかと思ってしまいます。

引接寺と六道珍皇寺にお参りをしたときは、閻魔像をしっかりと拝んでおきましょう。

嘘のお願いをすると舌を抜かれるのでご注意を。