武蔵坊弁慶が愛した大きな石・弁慶石

京都市中京区の三条通を河原町から西の烏丸に向かって進んで、アーケード街を過ぎたあたりに建っているビルの入り口付近に大きな石と石碑が置かれています。

その大きな石は、弁慶石と呼ばれています。

安宅の関

弁慶石は、その名のとおり、源義経に仕えた武蔵坊弁慶と関係があります。

下の写真が、その弁慶石です。

弁慶石

弁慶石

弁慶は、この大きな石が好きだったそうです。

弁慶の死後、この石は奥州高館(たかだち)にあったのですが、ある理由から三条通に置かれています。

元暦2年(1185年)3月に壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼした源義経は、その後、兄の頼朝と不仲となります。

頼朝は、義経の命を奪うために土佐坊昌俊に襲撃するように命じましたが、失敗に終わります。

命を狙われた義経は、一旦京都を去り、船で九州に行こうとしましたが、嵐に遭い断念します。

義経は、その後も頼朝の捜索を受け、近畿を転々と逃げ続けましたが、遂に若い頃にお世話になった奥州平泉の藤原秀衡を頼ることにしました。

義経主従は、山伏姿に変装し、北陸から平泉に向かうことにしました。

しかし、途中、石川県の安宅(あたか)の関で、彼らは足止めされます。

安宅の関の関守は、富樫泰家。

先頭の弁慶は、番卒に関所を通してくれるように頼みましたが、一行の怪しさから柵内の白洲に連れて行かれます。

そして、富樫泰家が弁慶にどこに何をしに行くのかを問いただしました。

弁慶は、東大寺大仏殿の建立のために寄付を募って旅をしていると答えます。

しかし、富樫は一行が偽物の山伏だと疑い、関所を通そうとしません。

そして、本物の山伏かどうかを確かめるために山伏なら知っているであろう事柄を弁慶に質問し始めました。

それに対して弁慶は、戸惑うことなく、すらすらと答えていきます。

弁慶の堂々とした答えにさすがの富樫も本物の山伏ではないかと思うようになってきましたが、しかし、まだ完全には信用していません。

そこで、富樫は弁慶に東大寺大仏殿の建立のための寄付を募っているのなら、それを示す勧進帳を持っているはずなので、それを見せるように命じます。

もちろん弁慶は偽山伏なので、勧進帳など持っていません。

しかし、弁慶は何も書かれていない1本の巻物を取り出し、あたかも、それを読むかのようにすらすらと口を動かしていきます。

これを見て、富樫の疑いは晴れ、一行が関所を通ることが許されました。

富樫は、ゆっくりと歩いて関所を通って行く一行を見つめます。すると、その中に気になる山伏を発見。

富樫は、その山伏に立ち止まるように命じ、義経に似ていると言い出します。

その呼びとめられた山伏は、富樫の言うように義経でした。

この事態を何とかするために弁慶はすかさず、義経の体を持っていた杖で叩き出します。

「お前が義経とやらに似ているせいで、皆に迷惑をかけているではないか。」

弁慶は、何度も何度も義経の体を叩き続けます。

弁慶が義経を叩く姿を見て富樫は、もう疑いは晴れたから関所を通ってよいと言います。

富樫は、その山伏が義経であることをわかっていて関所を通したのです。

衣川

安宅の関を越えた義経主従は、なんとか奥州平泉に到着しました。

藤原秀衡は、義経を快く迎え、自分が死んだ後は、義経を総大将として鎌倉の頼朝と戦うようにと、その子の泰衡に言います。

それからしばらくして、秀衡はこの世を去りました。

鎌倉の頼朝は、泰衡に何度も義経を引き渡すように催促します。

この催促にこらえきれなくなった泰衡は、遂に義経を襲撃することを決断します。

文治5年(1189年)閏4月30日。

泰衡の兵が、義経の住む衣川の高館を攻撃しました。

義経は、持仏堂にこもり自害を決意します。

弁慶は、持仏堂の前に立ち、体に無数の矢を受けても、攻めよせてくる泰衡勢から義経を守り続けました。

そして、持仏堂から火が上がり、義経の自害を見届けた後、弁慶は立ち往生したのでした。

三条に戻った弁慶石

弁慶は、幼少の頃、三条京極に住んでいたと伝えられています。

弁慶が愛した弁慶石は、奥州高館付近にあったのですが、「三条京極に行きたい」と発声し、その付近で熱病が蔓延したことから、在所の人々が恐れて、享徳3年(1454年)に三条京極寺に移したそうです。

その後、誓願寺方丈の庭に移った後、明治26年(1893年)に当地に置かれました。

ちなみに弁慶石が置かれている辺りは、弁慶石町と呼ばれています。

なお、石川県の安宅の関については、「ちょいとお出かけ北陸めぐり」というWEBサイトの下記ページに写真が掲載されていますのでご覧になってください。

また、奥州高館については、「一目千石 世界遺産を追いかけて」さんの下記記事で高館義経堂の写真が掲載されています。こちらもぜひご覧になってください。