京都には、お寺や神社の境内に変わった神さまが祀られていることがあります。
例えば、嵐山の法輪寺境内に建つ電電宮には、電気の神さまが祀られていますね。
今回紹介する圓成寺(えんじょうじ)の境内にも変わった神さまが祀られています。
その神さまは、なんと「痔」の神さまです。
痔がもとで亡くなったのに神さまとなった
圓成寺は、京都市北区の鷹峯に建っています。
付近には、源光庵や光悦寺といった紅葉の名所があります。もちろん圓成寺も秋になると真っ赤な紅葉を楽しむことができます。
ただ、残念なのは、境内が写真撮影禁止ということ。
参拝者のマナーが悪いせいなのかもしれませんね。
圓成寺は、寛永7年(1630年)に日任(にっとう)が一条家の援助により創建しました。
平安時代、当地には都の北方鎮護のために官寺の霊巌寺(れいがんじ)があり、平安京総鎮守の妙見大菩薩が祀られていました。
霊巌寺は、中世になると荒廃していましたが、圓成寺創建に伴い再建され、妙見霊場が復興されました。
境内には、圓成寺の本堂の他に古墳状の石窟造りになっている岩戸妙見宮があります。そこには、右手に剣を持ち、左手に蛇を握り、頭上には北斗七星をいただいた岩戸妙見大菩薩が祀られています。高さは6尺(約1.8メートル)もあります。
圓成寺の見どころは、この岩戸妙見宮と紅葉ということになります。
肝心の痔の神さまはというと、境内の奥の方にひっそりと建つ小さな祠に祀られています。
痔の神さまの名は、秋山自雲(しゅうざんじうん)と呼ばれている実在した人物です。
ちなみに秋山自雲は法名で、生前は岡田孫右衛門と名乗っていました。
彼は、38歳の時に痔を患い、あらゆる治療をしましたが、良くなりませんでした。
そこで、孫右衛門は、本性寺(ほんしょうじ)というお寺の題目堂に参籠し、痔の平癒を祈願します。
しかし、その甲斐もなく、孫右衛門は、延享元年(1744年)に7年間の闘病の末、45歳で亡くなりました。
孫右衛門は、亡くなる前、「痔で悩む人が題目を唱えれば私が助けよう」と言ったそうです。
その後、痔を患った孫右衛門の友人が、彼の墓前で願掛けをしました。すると、その友人の痔が治り、たちまち噂が広まって、各地に痔の神様が祀られるようになりました。
圓成寺の秋山自雲霊神廟に祀られている痔の神さまもそのひとつです。
自分自身の痔を治せなかった秋山自雲にお願いすると、痔が治るというのは何とも不思議ですね。