11月下旬に京都市東山区の善能寺に紅葉を見に行った後、向かいに建つ来迎院(らいごういん)にも参拝しました。
来迎院も、善能寺と同じく泉涌寺(せんにゅうじ)の塔頭(たっちゅう)です。
境内にはカエデが多く植わっており、晩秋には紅葉を見られるのですが、訪れる人は少なく、この時期でも騒がしくなることがありません。
境内の紅葉が見ごろ
来迎院には、JRまたは京阪電車の東福寺駅から東に約17分歩くと到着します。
小さな石橋の先にある山門をくぐり境内に入ると、赤、黄、緑のモミジがお出迎え。
山門付近は日射しが入りにくく紅葉が遅れる傾向にありますが、日が当たっている場所に植わっているカエデは、オレンジ色から赤色に色づいていました。
足元に落ちたモミジが多くなっていることから、紅葉が見ごろを迎えたのは1週間くらい前のようです。
竹垣と平行するように東に延びる石畳の先には本堂。
年季が入った竹垣は枯れたような灰色で、晩秋の景色とよく調和しています。

竹垣と紅葉と本堂
それでは本堂にお参り。
堂内に安置されているのは、忠臣蔵でお馴染みの大石良雄(おおいしよしたか)の念持仏である勝軍地蔵大菩薩。
大石良雄は、赤穂藩取り潰し後に外戚であった来迎院住職の卓巌韶興宗師を頼り、寺請証文を受けて山科(やましな)に住まい、当院の檀家になっています。
ゆえに彼の念持仏が祀られているんですね。
ちなみに本尊は阿弥陀如来です。
本堂の後ろの石段先に建つのは荒神堂。

石段と紅葉
石段脇の紅葉が見ごろですね。
荒神堂の前にもカエデがあるのですが、すでにほとんどの葉を散らし、枝には数えられる程度のモミジが残るだけ。
来迎院では、荒神堂から見下ろす紅葉が定番で、この日も本堂の屋根越しに赤色やオレンジ色の紅葉が見られました。

本堂の屋根と紅葉
境内にいるのは3人くらいだったので、遠慮することなく石段上からじっくりと紅葉を味わえます。
サザンカもやや桃色が入った白色の花を無数に咲かせ、モミジを背景に美しい姿を披露していました。

サザンカと紅葉
晩秋から冬へと季節の移ろいを感じさせる光景ですな。
無人の含翠庭で見る紅葉
境内の北に建つ庫裡(くり)に向かいます。
庫裏は、含翠庭(がんすいてい)と呼ばれる庭園の拝観受付となっており、ここで300円を納めます。
今まで何度も来迎院を訪れていますが、含翠庭を拝観するのは今回が初めて。
いつも、また今度でいいかと思いながら拝観を先延ばしにしていました。
でも、今年の秋は絶対に見に行くぞと決めていたので、紅葉の見ごろ時期を狙って来迎院を訪れたんですよね。
庭園の入り口がわからず、きょろきょろしていたら、受付からお寺の方に「そこの戸から中に入ってください」と言われ、竹垣の一部が前後に動く扉になっていることに気づきました。
その扉を手前に引くと中から男性が出てき、偶然にも入れ替わりで庭園に入ることに。
含翠庭は、カエデがたくさん植えられており、ちょうど紅葉が見ごろを迎えていました。
庭園の北側には客殿、その東隣には茶室が建っています。

客殿と紅葉
まずは、客段に上がります。
縁側の隅にボタンがあり、押してみると音声ガイドが流れ始めました。
来迎院の由緒、庭園の見どころ、大石良雄と当院の関係などの説明を聞きながら、縁側に座り庭全体を見渡します。

客殿から眺める含翠庭
ここにいるのは私だけ。
まさに貸切状態。
客殿からだと南向きになるので逆光で紅葉が見づらいかと思いましたが、この日は曇り空だったため眩しさを感じません。
木々の背が高いので、晴れていても、それほど眩しくないのかもしれませんが。
客殿の中には、大石良雄の肖像画などの展示物が並び、小泉純一郎さんが総理大臣時代に当院を訪れたことを報じた新聞記事も見られました。
希望の方は、500円で抹茶をいただくこともできますよ。
縁側に腰かけ、両手を背中の後ろにつき、姿勢をリクライニング状にして、しっとりと色づいた含翠庭の紅葉を眺めます。
少し肌寒く感じる縁側に座っていると、温かいコーヒーを飲みながら鑑賞したくなりますね。
大石良雄は、隣の茶室で同士と吉良邸討ち入りの密会をしていたという。
今でさえ人が少ない来迎院。
元禄の世なら、なおさら人目につくことはなく、誰にも怪しまれず討ち入りの計画が進められたのではないかと思われます。
時折、茶室から庭園を眺め思案にふけることもあったのかと想像するも、拝観案内によると含翠庭の造園は大正時代とのことなので、大石良雄が同じ景色を見ていたことはなさそうです。
客殿から出て庭園の散策開始。
客殿と茶室の間には、伽藍石の蹲踞(つくばい)が人目を避けるように置かれていました。
竹筒から流れ落ちた水が蹲踞の縁から溢れ、散り紅葉を濡らします。

伽藍石の蹲踞
茶室の含翠軒は、大石良雄が建てたもの。

含翠軒
中には上がれないものの内部の様子を見ることはできます。
3畳間の奥にかかる「含翠」と書かれた軸。
薄暗い部屋を見渡し、「これが世に聞こえし含翠軒か」と、うそぶいてみる。
含翠軒の前に配された心字池。

心字池
池のほとりにはカエデが1本だけ。
紅葉と一緒に眺められる池ではないですね。
時計回りで進み、様々な角度で庭園を鑑賞。
八面佛石幢は、笠の下が八角形になっていて、各面に仏さまが彫られていました。

八面佛石幢と紅葉
八面佛石幢と一緒に見る紅葉は、無人の庭園を一層もの悲しく感じさせます。
この雰囲気は、嵯峨野の祇王寺にそっくり。
しかし、祇王寺は人気の紅葉の名所となっていますが、ここ来迎院は知る人ぞ知る紅葉の穴場。
人の少なさから、来迎院の方が、晩秋のしみじみとした趣が伝わってきます。
再び客殿に戻り、縁側に腰かけます。
ずっと見ていられる紅葉風景。

含翠庭の紅葉
人が庭園に入って来る気配もないので、心置きなく見ごろの紅葉を眺められます。
それにしても、古びた竹垣が良い演出をしており、紅葉が情緒的ですな。
そろそろ含翠庭から出ましょう。
曲線を描く石畳に散ったモミジが、秋の終わりを告げているよう。

石畳と散り紅葉
最後まで去りがたい情景を放ってくる恨めしさよ。
来迎院は、紅葉の時期でも訪れる人が少なく、静かにお参りできました。
特に含翠庭は拝観者がおらず、紅葉を独り占めでしたよ。
また、初夏の新緑の時期に拝観したいものです。
この後は、悲田院に参拝します。
なお、来迎院の詳細については以下のページを参考にしてみてください。