京都府宇治市の宇治橋を西に渡り、県通(あがたどおり)を100メートルほど南下すると、左手に小さな神社が建っています。
あまり目立たたない外観で、観光客が訪れそうにないこの神社は橋姫神社といいます。
縁切りのご利益が有名で、意外と知名度は高いかもしれません。
神社の伝承を知ると、悪縁を切るために参拝したくなるはずです。
鬼女になって本懐を遂げる
橋姫神社には、JR宇治駅から東に約10分歩くと到着します。
京阪電車の宇治駅からだと、南西に徒歩約10分です。
年季の入った木造りの鳥居が、いかにも悪縁切りの神社らしいです。

橋姫神社
境内には小さな祠が2つあります。
一つは橋姫神社、もう一つは住吉社の社殿です。
橋姫神社は、大化2年(646年)に南都元興寺の僧道登が宇治橋建設の鎮護のため瀬織津姫(せおりつひめ)を祭神として創建したのが始まりとされます。
かつては宇治橋の三ノ間に祀られていましたが、明治3年(1870年)の洪水で現在地に遷され、その際、橋の西詰にあった水の神の住吉明神も合祀されています。
祠が2つあるのは、そういうことなんですね。
瀬織津姫は橋姫とも呼ばれています。
橋姫と呼ばれるようになったのは、『源平盛衰記』の話にちなみます。
時は、平安遷都(794年)から間もない嵯峨天皇の時代。
都に嫉妬深い女房がいました。
夫は、そんな女房に愛想をつかし、愛人を作ります。
それを知った女房は復讐のため、丑の刻参りを決意します。
丑の刻参りと言えば、左京区の貴船神社。
鉄輪の井戸の鬼女も貴船神社に丑の刻参りをしており、その効験は絶大です。
女房が丑の刻参りを続けると、貴船の水神が彼女にお告げを下しました。
そのお告げは、宇治川に21日間浸かり続けると鬼になれるというもの。
お告げを信じ、宇治川に浸かり続けること21日。
ついに女房は願い通り鬼となり、夫も愛人も殺してしまいました。
以来、女房は橋姫と呼ばれ、橋姫神社が悪縁切りのご利益を授けてくれると信仰されるようになります。
祇園祭の鈴鹿山の御神体は瀬織津姫神
毎年7月に京都で行われる祇園祭に登場する鈴鹿山の御神体は瀬織津姫神(せおりつひめのかみ)です。
瀬織津姫神は、鈴鹿山で道行く人々を苦しめる悪鬼を退治したとの伝承を持っています。
橋姫は、嫉妬から鬼女となり、瀬織津姫神は鈴鹿山で鬼を退治したというのですから、なかなか興味深いですね。
貴船神社の神さまの神通力により鬼女となった橋姫は、悪鬼を退治する力も身につけたということでしょうか。
瀬織津姫神は、山鉾巡行では涼しい顔で山の上に立っていますが、その無表情の仮面の裏には、鬼女の秘めたる力が隠されているのかもしれません。

鈴鹿山の瀬織津姫
そのようなことを考えながら山鉾巡行を見ると、鈴鹿山の御神体・瀬織津姫神が違った姿に見えてきますね。
悪縁を切りたいと思っている方は、一度、橋姫神社に参拝してはいかがでしょうか。
その際は、鬼にならないよう注意してください。
なお、橋姫神社の詳細については以下のページを参考にしてみてください。