9月下旬に京都市山科区の日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)に参拝した後、近くのインクラインを歩きました。
インクラインは、明治時代に琵琶湖疏水の流れを利用した舟運のための傾斜鉄道です。
昭和26年(1951年)に陸送の発達によりインクラインは使われなくなりましたが、現在は、春の桜が美しい観光名所となっています。
そのため、春はインクラインの桜を見ようと多くの旅行者や観光客の方が訪れますが、それ以外の季節だと閑散としており、のんびりと歩くことができます。
秋空の下のインクライン
インクラインの最寄り駅は、地下鉄の蹴上駅です。
駅からは、北でも南でも、少し歩けばインクラインに入ることができます。
今回は、日向大神宮の参拝後だったので、南側からインクラインに入ることに。
南側の入り口には、義経地蔵が祀られています。
源義経が、奥州平泉に赴く際、この付近で平家の武者9人とすれ違いました。
その時、1人が誤って泥水を蹴り上げ、義経の衣服が汚れました。
これに怒った義経は9人を斬り殺し、村人が彼らの菩提を弔うために九体石仏を安置しました。
その内の1体が、この義経地蔵です。
この辺りの地名を蹴上と呼ぶのは、この言い伝えが由来とされています。
西に目を向ければ、蹴上浄水場。
蹴上浄水場は、毎年ゴールデンウィークに一般公開され、美しいツツジを見ることができますよ。
インクラインの線路を歩きます。
頭上には、爽やかな秋空。
そして、両脇には、多くのソメイヨシノ。
でも、9月なので花は全く咲いていません。
ソメイヨシノの葉は、少しずつ赤色に色付き始めていました。
インクラインを北に向かって歩いて行きます。
下り坂になっているので、歩くのが楽ですね。
ねじりまんぽ
インクラインの中ほどまでやってくると、四角いレンガが現れます。
このレンガは、ねじりまんぽの屋根です。
ねじりまんぽは、下のようなトンネルです。
「まんぽ」とはトンネルのことで、ねじりまんぽは、明治21年(1888年)に三条通から南禅寺へ向かう道路の造成に伴って建設されました。
近くの説明書によると、高さ約3メートル、幅約2.6メートル、長さ約18メートルの小さ目のトンネルですが、上を台車に乗った船が行き交うインクラインの重さに耐えられるように内壁のレンガが斜めに巻かれる工夫が凝らされているのだとか。
また、トンネルはインクラインと直角にならないよう斜めに掘られているのも特徴的です。
トンネルの上側の扁額には「雄観奇想(ゆうかんきそう)」と記されており、これは当時の京都府知事であった北垣国道が揮毫(きごう)したもので、「見事なながめとすぐれた考えである」という意味です。
また、トンネルの反対側にも「陽気発処(ようきはっするところ)」と記された扁額がかかり、こちらは「精神を集中して物事を行えば、どんな困難にも打ち勝つことができる」という意味です。
全国的にねじりまんぽのような形状のトンネルは施工例が少ないそうです。
蹴上の交差点。
交通量が非常に多い交差点ですが、自動車が走っていない瞬間を狙って撮影しました。
奥に見えるのは、ウェスティン都ホテルです。
さらにインクラインを北に歩いて行くと、舟が置かれています。
伏見の清酒の酒樽を乗せたこの舟は、木屋町二条の一之船入にあった高瀬舟でしょうか。
インクラインを一番北まで進むと、京都市動物園の噴水があります。
晴れた日に見る噴水も、爽やかであります。
ここで、インクラインから歩道に上がります。
インクラインの出口には、「巨大な輝き」というモニュメントが設置されており、清々しい秋空の下で、その名のとおり金色の輝きを放っていましたよ。
初秋のインクラインは、人が少なく、のんびりと歩くことができました。
線路の上を歩ける機会は、あまりないですから、蹴上に訪れた時は、ぜひインクラインも歩いてください。
この後は、南禅寺に参拝しました。