京都市北区の等持院(とうじいん)は、足利家の菩提寺として知られています。
現在は、周囲に民家や立命館大学ができ、境内が削られてしまっているのですが、それでも割と広々としています。
その等持院には、心字池と芙蓉池の2つの池から構成される方丈北庭があり、今も変わらず美しい景色を参拝者に見せてくれます。
今回の記事では、等持院の方丈北庭を紹介します。
心字池の風景
等持院には、京福電車の等持院駅から北に7分ほど歩くと到着します。
入り口から境内に入るとマキノ省三の像が立ち、その前を通って歩いて行くと拝観受付があります。
拝観受付で拝観料を納め建物の中に入ります。
建物には、書院、方丈、霊光殿などがあり、霊光殿には歴代の足利将軍の像があるのでこちらもしっかりと見ておきたいですね。
方丈北庭は、東側に心字池、西側に芙蓉池が配された池泉回遊式庭園です。
作庭したのは、嵐山の天龍寺の開山である夢想疎石です。
ちなみに等持院の開山も夢想疎石で、暦応4年(1341年)に足利尊氏が、ここ衣笠山の南麓に創建しました。
東側の心字池は、草書体の心の字をかたどった形をしており、池中には中ノ島があります。
池の周囲には、多くの木々が植えられており、森林のようになっています。
等持院の境内が今よりも広かったころには、衣笠山も見えたそうですよ。
池のほとりにはカエデが植えられており、初夏から夏にかけては緑色の葉が美しく、心字池の水面にもその色が映り込み、より一層緑色の深みが増します。
中ノ島には、観音閣が建っていたのですが、現在はその礎石だけが残っています。
中ノ島からは、心字池越しに等持院の諸堂が見えますよ。
心字池のほとりにはカエデが多いことから、秋が深まると美しい紅葉を見られます。
紅葉も非常にきれいなので、秋の行楽シーズンに等持院に参拝したいですね。
芙蓉池と清漣亭
心字池は、歩きながら鑑賞したいですが、西側の芙蓉池は、書院の中からじっくりと眺めたいですね。
その名のとおりフヨウの花をかたどった庭園で、花木をあしらい草木を配しています。
池の北側の緩やかな斜面には、幾重にも刈込が重なり、独特の景観を作り出しています。
そして、その上には、茶室の清漣亭(せいれんてい)が建ち、落ち着きのある姿を見せてくれます。
清漣亭は、村田珠光や相阿弥らと茶道を興した足利義政好みの茶室で、等持院が復興された長禄元年(1457年)に加えられたものです。
清漣亭の内部も見ることができ、質素な室内が心を和ませてくれます。
芙蓉池の周囲も、心字池と同じように歩くことができます。
南から北に向かって芙蓉池と清漣亭を眺めます。
衣笠山も借景として取り込んでいる庭園ですが、今は衣笠山まで見るのは難しくなっています。
芙蓉池は、清漣亭の前庭としての性格も持っていることから、清漣亭から見下ろす景色も格別です。
また、春には侘助とも呼ばれる有楽椿(うらくつばき)、夏にはクチナシ、そして、初秋にはフヨウを見ることもでき、それぞれの季節に合った風景を清漣亭の前から楽しむことができます。
等持院は、割と穴場に近いお寺なので、旅行者や観光客が少なめです。
紅葉の時期でも、それほど多くの参拝者が訪れることがないので、のんびりと方丈北庭を鑑賞できますよ。
なお、等持院の詳細については以下のページを参考にしてみてください。