京都市東山区に蓮華王院(れんげおういん)という寺院が建っています。
知らないお寺だなと思っても、通称が三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)だと聞くと、あの長いお堂があるお寺だと思い出せることでしょう。
その三十三間堂に祀られている観音さまの数は、なんと一千一体(1,001体)。
ところで、これだけ多くの観音さまを祀る意図はどこにあったのでしょうか。
対応できる悩みは3千万を超える
三十三間堂には、京阪電車の七条駅から七条通を東に約5分歩くと到着します。
市バスだと「博物館三十三間堂前」で下車してすぐです。
三十三間堂は、本堂の内陣の柱の間が33あることからそのように呼ばれていることは有名な話です。
柱と柱が3.6メートルありますから、お堂の南北の長さは約120メートルになりますね。

三十三間堂の東側
さて、堂内の一千一体の観音さまの配置ですが、中央に高さ355cmの中尊の千手観音坐像が正面を向いてどっしりとお坐りになっており、その左右に500体ずつ十一面千手千眼観世音菩薩(じゅういちめんせんじゅせんげんかんぜおんぼさつ)と呼ばれる千手観音立像がお並びになっています。
これだけ多くの観音さまを祀る三十三間堂にお参りをすれば、どのような悩みも救済してくれるに違いありません。
なんでそんなことが言えるのかと疑問に思うでしょうが、観音さまの特徴を知れば納得してもらえるはず。
観音さまは、両脇に40の手を持っており、ひとつの手で25の世界を救うとされています。
したがって、「40×25」で千手ですから、1,000の願い事を聞き届けてくれることになります。
そして、観音さまは、三十三応現身(さんじゅうさんおうげんしん)というように衆生を救済するために相手に合わせて33の姿に変身できることから、「33×1,000」で3万3千種類の悩みに対応可能です。
しかも、一千体の十一面千手千眼観世音菩薩は、ひとつとして同じものがないので、さらに1,000をかけると33,000,000(3千3百万)となり、これに中尊の3万3千を足すと合計で33,033,000(3千3百3万3千)の悩みに対応できる計算です。
もはや、三十三間堂の観音さまに救済できない悩みは存在しないと言っても過言ではありません。
三十三間堂には何度かお参りしていますが、残念ながら本堂内の撮影は禁止されているので、一千一体の観音さまの写真はありません。
仮に写真で見たとしても、120メートルのお堂にずらっと並んだ観音さまの神々しい世界を想像するのは、なかなか難しいです。
薄暗いながらも慈悲に溢れた静寂の空間を体感するには、実際にお参りする必要がありますね。
観音さまが並ぶ隅にさりげなく立つ風神と雷神や正面に整列する二十八部衆も、細部まで丁寧に彫り込まれており、これだけの仕事をよく手作業でこなせるなと、鎌倉時代の仏師の手練に感心するばかりです。
後白河上皇の創建の意図
三十三間堂の創建は、長寛2年(1164年)。
後白河上皇が、平清盛の寄進を受けて建立したもので、後に火災で焼失した後、鎌倉時代の文永3年(1266年)に再建されています。
上皇が、なぜ観音さまを祀るお堂を建立したのかを考えると、保元の乱と平治の乱の二度の戦に巻き込まれたことと関係しているように思えます。
戦乱により乱れた世を建て直すためには、観音さまの慈悲にすがるしかない。
その想いから観音さまを祀るお堂の建立を発願したのでしょう。
でも、観音さまは一体で大丈夫か、いや、それでは物足りない、いささかぎゅうぎゅう詰めでも、あと一千体は必要ではないか。
そう考えたのかもしれません。
三十三間堂は、後白河上皇が頭痛平癒のために創建したと伝えられていますが、そのために一千一体もの観音さまを祀るようなことをするのかとの疑問がわきます。
当時、戦乱により荒れ果てた都で飢えや疫病に苦しむ人々は多かったはず。
彼らを救うためには、どうしても一千一体の観音さまを祀る大きなお堂が必要だったのでしょう。
そのように思いながら堂内に並ぶ観音さまを拝むと、自分のためだけでなく、世界中の人々の救済を祈願するのが、あるべき参拝の仕方ではないかと気づかされます。
三十三間堂は、普段から拝観できますが、毎年1月の成人式に近い日曜日は無料です。
この日は、本堂の西側で20歳の男女による通し矢が行われ、新春の京都の愛でたい行事として定着していますね。
ただ、過去に通し矢を見に行った時は境内の一部が会場になっていたり、人が多かったりと、長大な三十三間堂の迫力がわかりにくかったです。

三十三間堂の西側
また、3月3日に春桃会(しゅんとうえ)が催され、この日も拝観料が無料です。
通し矢の日より訪れる人は少なく、三十三間堂全景が見やすいです。
何より3月3日に参拝することで観音さまのご利益を大いに授かれそうです。
上記以外の日は、混雑するほど人はおらず、静かにお参りをしたい方は通常の拝観日に参拝することをおすすめします。
なお、三十三間堂の詳細については以下のページを参考にしてみてください。