京都市南区に建つ東寺は、世界遺産に登録されている寺院とあって、多くの旅行者や観光客の方が訪れます。
京都駅からも近く、京都観光の定番の観光名所と言えるでしょう。
私は、東寺には何度も参拝しており、春の桜や秋の紅葉も見に行っています。
桜や紅葉の季節以外でも、東寺は見どころがたくさんあるので、いつ参拝しても十分に満足できるはずです。
今回は、東寺に参拝した際にこれだけは見ておきたい建物を紹介します。
無料で見られる建物
東寺の最寄り駅は、近鉄電車の東寺駅です。
駅からは、九条通を西に5分ほど歩くと、東寺の南大門が見えてきます。
京都駅からも西に15分から20分程度歩けば、北東の慶賀門から境内に入れます。
南大門
九条通に南面して建つ南大門は、東寺にある門の中でも特に立派です。
東寺に参拝する際は、この南大門から境内に入りたいですね。
東寺は、延暦15年(796年)に創建されたお寺ですが、現在の南大門がここに建てられたのは明治28年(1895年)のことです。
もともとは、東山の三十三間堂にあった西門で、平安遷都1100年を記念して東寺に移築されました。
かつての南大門には、運慶と湛慶の作と伝わる仁王像が祀られていましたが、明治元年に南大門は焼失しています。
現在の南大門は、安土桃山時代の建造物で重要文化財に指定されています。
鎮守八幡宮
南大門をくぐって西に歩くと、朱色の建物が建っています。
この建物は、鎮守八幡宮です。
鎮守八幡宮は、東寺が創建された延暦15年に建てられましたが、南大門と同じく明治元年に焼失しました。
現在の建物は、平成3年(1991年)に再建されたものです。
本尊は、弘法大師空海が1本の檜の巨木から作ったと伝えられる僧形八幡神座像と女神座像2躯の3躯です。
普段は、内部を見ることはできませんが、東寺に参拝した際は、鎮守八幡宮にもお参りしておきたいですね。
南北朝時代には、足利尊氏が東寺に布陣しましたが、新田義貞との戦いの最中にこの鎮守八幡宮から新田勢に向かって矢が飛び、足利勢が勝利したとも伝えられています。
大師堂
鎮守八幡宮からまっすぐ北に歩いて行くと、左手に門が現れます。
その門をくぐった場所に建つのが大師堂です。
御影堂(みえどう)とも呼ばれる大師堂は、入母屋造りの礼堂、切妻造りの中門、総檜皮葺の屋根を持つ建物で、国宝に指定されています。
見た目にも、非常に落ち着きがありますね。
大師堂は、弘法大師の住房だった建物で、大師の念持仏の不動明王像が祀られていたことから不動堂とも呼ばれていました。
不動明王像も国宝に指定されていますが、秘仏のため参拝者は見ることができません。
現在の大師堂には、堂内の南側に不動明王、北側に大師像が祀られ、弘法大師信仰の中心となっています。
北側から大師堂に上がることができますから、東寺を訪れた際は、大師堂の中に入ってお参りをしておきましょう。
なお、現在の大師堂は、康暦元年(1379年)に焼失した後、明徳元年(1390年)に再建されたものです。
毘沙門堂
大師堂の南側には、毘沙門天を祀る毘沙門堂が建っています。
中に祀られているのは、都七福神めぐりの1つに数えられている毘沙門天で、天慶2年(939年)の平将門の乱の時、都の守護神として羅城門に安置されていた兜跋毘沙門天立像(とばつびしゃもんてんりゅうぞう)です。
天元元年(978年)7月9日に羅城門が大風で倒壊した後、東寺の食堂(じきどう)に移して安置したりしましたが、文政5年(1822年)に現在のお堂を建立して祀られるようになりました。
現在の兜跋毘沙門天立像は、創建1200年記念事業で平成6年に修復されています。
国宝に指定されている文化財で、東寺の宝物館で見ることができますよ。
年明けに都七福神めぐりで東寺を訪れた際は、御朱印も授かっておきたいですね。
食堂
境内の北側に建つ食堂は、その名からも想像できるように僧侶が斎時に集まって食事をした場所です。
現在の食堂は、昭和5年(1930年)の火災で焼失した後、昭和9年に再建されたものです。
東寺を訪れた際は、食堂の外観を見るだけでなく、ぜひ、中に入ってもらいたいです。
かつて、食堂の本尊は6メートルの千手観音菩薩でしたが、昭和5年の火災後に修復された後、宝物館に安置されることになりました。
現在は、明珍恒男作の十一面観音立像が本尊として祀られています。
昭和5年の火災では、堂内に安置されていた四天王像も被災したのですが、今でも、痛々しい姿のまま食堂に安置されています。
四天王像も3メートル以上の高さの立派な姿をしており、被災していなかったら、宝物館やその他の建物に移されていたかもしれませんね。
トイレ
食堂の近くにあるトイレも興味深いので見ておきたいです。
京都市では、平成30年度(2018年度)から宿泊税を利用して、観光トイレを整備しています。
東寺のトイレもその1つです。
男子トイレの壁には、以下のような絵画がかかっています。
この絵画は、平成東寺伝説絵巻で、東寺に伝わる説話や逸話をもとに作られたフィクションです。
男子トイレの絵巻は、五重塔を大修理している場面を描いたものとなっていますよ。
拝観料が必要な建物
以上は、誰でも無料で見られる建物ですが、東寺には、拝観料が必要な建物もあります。
それは、講堂と金堂です。
拝観料は、通常は500円です。
東寺に参拝した際には、無料で見られる建物だけでなく、拝観料が必要な建物も見ておきたいです。
講堂
拝観受付から少し南に歩いた場所に建っているのは講堂です。
講堂は、東寺の創建時にはなかった建物で、弘法大師によって承和2年(835年)頃に完成されました。
講堂の魅力は、何と言っても、内部の立体曼荼羅です。
内部は、中央に如来部、右に菩薩部、左に明王部と大きく区分されています。
如来部の中央には、大きな大きな大日如来が祀られています。
金色の姿をした大日如来は、その輝きが美しく、いつまでも見入ってしまいますね。
如来部は、大日如来をはじめ、阿閦(あしゅく)、宝生、不空成就(ふくうじょうじゅ)、阿弥陀の五智如来が祀られています。
また、菩薩部には、金剛波羅弥陀菩薩(こんごうはらみったぼさつ)を中心に金剛薩埵(こんごうさった)、金剛宝、金剛法、金剛業の五大菩薩が祀られ、明王部には、不動明王を中心に金剛夜叉(こんごうやしゃ)、降三世(ごうざんぜ)、軍荼利(ぐんだり)、大威徳(だいいとく)の五大明王が祀られています。
さらに堂内の四隅には、多聞天、持国天、増長天、広目天の四天王が立ち、右に梵天(ぼんてん)、左に帝釈天(たいしゃくてん)も見ることができます。
講堂の中の荘厳な光景は、見事の一言です。
金堂
講堂の次は、その南に建つ金堂の中に入りましょう。
金堂は、東寺の本堂で、延暦15年に建てられました。
現在の金堂は、慶長8年(1603年)に豊臣秀頼が片桐且元を奉行にして再建したものです。
堂内の中央には、本尊の薬師如来坐像が祀られており、日光菩薩と月光菩薩(がっこうぼさつ)が左右に並んでいます。
薬師如来坐像も非常に大きな仏像で、金色の輝きが講堂の大日如来と同じく言葉にできないほどの美しさです。
薬師如来坐像の下には、十二神将も並んでいるので、忘れないように見ておきましょう。
五重塔
東寺と言えば、忘れてはならないのが五重塔です。
京都市内に五重塔は4つありますが、その1つが東寺の五重塔ですね。
五重塔は、境内の外からでも見ることができますが、やはり、東寺の中、特に悲観エリアの瓢箪池越しに眺めたいですね。
瓢箪池に映る五重塔も美しく、四季折々の姿を見せてくれます。
五重塔は、弘法大師が天長3年(826年)に創建に着手したものです。
ただ、4回も焼失していることから、現在の五重塔は天長年間のものではなく、寛永21年(1644年)に徳川家光が再建したものです。
高さは55メートルあり、国内の古塔では最も高いです。
通常は、五重塔は外観のみしか見ることができませんが、春や秋などの特別公開の時には、初層内部も拝観できます。
内部は、心柱を大日如来に見立て、その周囲の須弥壇上に阿閦、宝生、不空成就、阿弥陀の金剛界四仏、八大菩薩を安置しており、先ほど紹介した講堂内部と同じ世界が広がります。
扉や周囲の壁の装飾も見ておきたいですね。
世界遺産に登録されている東寺は、見るものがたくさんありますが、ここで紹介した建物はいつでも見られるようになっています。
その他にも、東寺の境内には建物がありますが、特別公開が行われているときにしか拝観できないものもあり、いつでも見られるわけではありません。
東寺に参拝した際は、ここで紹介した建物は必ず見ておきましょう。
なお、東寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。