京都市西京区の松尾大社(まつのおたいしゃ)には、昭和に造られた松風苑という庭園があります。
作庭したのは、昭和を代表する作庭家の重森三玲(しげもりみれい)です。
この松風苑を拝観するために5月下旬に松尾大社に参拝してきました。
曲水の庭
松尾大社は、阪急電車の松尾駅を出てすぐの場所に建っています。
大きな朱色の鳥居が目立つので、道に迷うことはないでしょう。
松尾大社は、京都で最も古い神社のひとつで、平安遷都(794年)よりも前にこの地域の住民が松尾山の神霊を祭って、生活守護神として祀ったのが始まりです。
お酒の神様としても知られており、酒造メーカーから寄贈された樽が境内にたくさんあります。
それでは本殿にお参り。
松風苑の受付は、本殿の右の方にあります。
拝観料は500円。
最初に見るのは曲水の庭です。
曲水の庭は、当社が最も栄えた平安時代をイメージして造られた庭園です。
築山の斜面から下までたくさんの大きな石が置かれています。
築山にある刈込はサツキで、そろそろ花を咲かせる頃だと思ったのですが、まだちらほらと咲いていただけでした。
水がくねくねと曲がりながら流れているのが特徴的です。
地面の石が、うろこのようで、何匹もの大きなヘビが這っているようにも見えますね。
曲水の庭を鑑賞した後は、宝物館へと進みます。
渡り廊下を歩き宝物館に向かうと、その近くにも庭があるのを発見しました。
この庭は、即興の庭といいます。
本来、設計計画にはなかったもので、重森三玲が即興的に造り上げたものだとか。
達人の域に到達すると、瞬間的に作庭のイメージが湧いてくるんでしょうね。
宝物館には、女神像など、たくさんの像が展示されています。
中には、相当古いものも展示されていて、顔の形が判別しないものや古木の破片のようなものもありました。
上古の庭
宝物館の次は、渡り廊下をくぐって上古の庭に向かいます。
上古の庭は、傾斜に石組が配されたような庭園です。
拝観案内によると、これらの石は石組ではないそうです。
松尾大社の後ろの山にある磐座(いわくら)にちなんで山下に造られたのが上古の庭で、重森三玲は、たくさんの石は、神々の意思によって据えられたものだと説明しています。
つまり、これらの巨石は、神々を象徴したものなんだそうです。
なるほど、奥が深いですね。
上古の庭を観た後は、近くのあじさい苑へ。
まだ5月ということもあり、花は咲いていないと思ったのですが、探してみるとガクアジサイが、ちょこっとだけ花を付けていました。
あいじさい苑の奥には、心願杯投げの3つの酒樽があります。
200円を納めると、杯をいただけます。それを酒樽の中に投げ入れることができたら願いが叶うそうです。
また、その隣には、磐座遥拝所もあります。
ちょうどこの真上に祭神の大山咋神(おおやまくいのかみ)を祀る磐座があるそうです。しっかりとお参りしておきましょう。
蓬莱の庭
あじさい苑を出た後は、いったん本殿のある敷地へと戻り、楼門を出ます。
そして、茶所の脇にある入口から蓬莱の庭に入ります。
蓬莱の庭は、古典的な手法の石組と現代的な手法の池の護岸を取り入れた池泉庭園です。
拝観案内には、重森三玲が池の形を指示し、その後、長男の完途がその遺志を継いで完成させたと記されています。
最初で最後の親子合作の庭園とのこと。
池には、水中から生えるように薄く長い石が配されています。
池の周囲に植えられたサツキには、少しだけ花が付いていました。
また、池の中には、大きな鯉が泳いでおり、浮島には亀もいました。
と思ったのですが、亀は置物ですね。
よく似ているので、本物と見間違えそうになります。
池の水は、庭園の奥に造られた滝から流れてきたものです。
上の写真は、滝がわかりにくいですね。
以上が、松風苑の3つの庭園です。
どの庭にも共通しているのが、大きな石をたくさん使っているということですね。
庭園に使われた石は、200以上で、その全てが徳島県吉野川の青石だそうです。
松尾大社に訪れた時は、庭園も鑑賞してみてはいかがでしょうか。