六角堂で誕生した華道の池坊

京都市中京区のビジネス街に建つ六角堂の境内の北側には、華道で有名な池坊(いけのぼう)のビルがあります。

池坊が、たまたま六角堂の近くにビルを建てたのではなく、この地が池坊と深いかかわりを持っているから建てたのだということは、六角堂と池坊との関係をご存じの方なら容易に想像できるでしょう。

六角堂を創建したのは聖徳太子です。

もしも、聖徳太子がこの地に六角堂を建立していなければ、池坊も誕生していなかったかもしれません。

如意輪観音を祀るお堂を建立

六角堂には、地下鉄の烏丸御池駅から烏丸通を南に約5分歩き、六角通を東に曲がれば到着します。

六角堂は通称で、正式には紫雲山頂法寺(しうんざんちょうほうじ)といいます。

当寺が、六角堂と呼ばれるのは上から見下ろすと本堂が六角形をしているからなんですね。

見下ろした六角堂

見下ろした六角堂

その六角形の本堂に祀られている如意輪観音は、淡路国岩屋に漂着した唐櫃(からびつ)に入っていたもので、聖徳太子がそれを見つけ念持仏としたと六角堂縁起では伝わっています。

聖徳太子が、六角堂を創建したのは、物部守屋(もののべのもりや)との合戦に勝利したことによります。

聖徳太子は、その頃、日本に入って来た仏教を広めようとしていましたが、物部守屋は反対の立場でした。

それが原因で、聖徳太子は蘇我氏とともに物部守屋と戦うことになるのですが、その前に聖徳太子は観音さまに合戦に勝利したら四天王寺を建立することを約束します。

合戦は聖徳太子と蘇我氏の勝利で終わり、観音様との約束を果たすため、山城国愛宕(おたぎ)郡に四天王寺を建てるための木材を探しに出かけました。

その時、聖徳太子は、如意輪観音を木の根元に置き、池で水浴びをします。

そして、水浴びを終えた後、如意輪観音を拾い上げようとしたところ重くて動かなくなっていました。

これは、この地で衆生を救えとの仏のお告げだと悟った聖徳太子は、お堂を作って如意輪観音を祀ることにしました。

これが六角堂の始まりです。

現在も、六角堂の境内には池があり、いつもハクチョウが優雅に泳いでいます。

池で泳ぐハクチョウ

池で泳ぐハクチョウ

如意輪観音を守護した小野妹子

如意輪観音が祀られた六角堂は、その後、小野妹子(おののいもこ)が聖徳太子の命により守護することになります。

あの遣隋使で有名な小野妹子ですね。

小野妹子は、池のほとりに僧坊を構え、朝夕、仏前に花を供えることにし、それが代々の住職に受け継がれていきました。

この辺りで、六角堂と華道との関係が見えてきましたよね。

15世紀になり、頂法寺の執行の中から立て花の名人が現れます。

それが、池坊専慶(いけのぼうせんけい)です。

彼は小野妹子の子孫とも言われており、彼以降、立て花は池坊の家業となりました。

池坊のビル

池坊のビル

16世紀になると、池坊専応が宮中や門跡寺院で花を立てて評判となり、池坊のいけばなを体系化した『池坊専応口伝(いけのぼうせんおうくでん)』も著わします。

ビルの入り口

ビルの入り口

池坊のビルの入り口近くには、いけ花発祥の地モニュメントがあり、その後ろの壁には、巻物を開いたような形をした展示物に『池坊専応口伝』の冒頭部分が記されています。

いけ花発祥の地モニュメント

いけ花発祥の地モニュメント

説明書によると、池坊では、『池坊専応口伝』を『大巻(おおまき)伝』といい、いけばなの根本を示す花伝書として代々承継して、今も相伝を続けているとのこと。

初代専好は豊臣秀吉に重用され大瓶の立花(りっか)を立て、江戸時代には、二代専好が後水尾天皇に召されて禁裏の花会を指導し立花を大成させます。

その後、いけばなが大衆化していく中、池坊は、立花と抛入花(なげいればな)から発展した生花(しょうか)の免許を段階的に伝授する家元制度を作り門人を増やしていき、昭和27年(1952年)には下京区に池坊短期大学も創立しています。

本堂と池坊のビル

本堂と池坊のビル

小野妹子が観音さまの前に花を供えてから1400年。

現代では、華道は芸術として広く受け入れられています。

室町時代の京都は、町衆と呼ばれる裕福な商人たちが活躍し様々な文化が花開きましたが、池坊専慶の登場でいけばなが発展したのも、その時代の空気によるものだったのかもしれませんね。

池坊のビルの西側には、歩道に向けていけばなが展示されています。

ビルに展示された生け花

ビルに展示された生け花

いけばなは季節に応じて変わるようで、クリスマスが近づく頃にクリスマスツリーのようないけばなも展示されていました。

クリスマスツリーのような生け花

クリスマスツリーのような生け花

池坊は、今はビジネス街となった烏丸六角に花を添え続けています。

なお、六角堂の詳細については以下のページを参考にしてみてください。

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