8月末に京都市東山区に建つ長楽館を訪れました。
長楽館では、8月8日から9月30日まで、京の夏の旅の特別公開が行われており、通常非公開の3階の御成(おなり)の間を拝観できます。
今回、長楽館を訪れたのは、その御成の間を見ることが目的であります。
御成の間
長楽館の最寄り駅は、京阪電車の祇園四条駅です。
駅からは、四条通を東に5分ほど歩き、八坂神社の境内を通って円山公園に行きます。
その円山公園の南側に長楽館が建っています。
入り口に拝観受付があるので、ここで拝観料600円を支払い、拝観券を受け取ります。
拝観券は長楽館の中に入って係の人に提示し、靴を脱いで3階に向かいます。
3階には、御成の間の他に長楽庵という茶室もあります。
表千家にある書院造の「残月亭」を模したと伝えられており、入り口前の扁額の「和楽」の文字は、画家の橋本関雪の書です。
そして、御成の間へ。
長楽館は、明治時代の「たばこ王」と呼ばれた村井吉兵衛が迎賓館として建てたのが始まりです。
村井吉兵衛は、幕末に生まれ、明治初期に煙草の行商で得た資金を元に煙草の製造を始めます。
そして、日本初の両切り紙巻き煙草を製造し、明治24年(1891年)にサンライズと名付けて販売しました。
さらにヒーローという煙草も販売し、これが5年後に年間生産量日本一となります。
明治37年に煙草が国の専売となったことから煙草の生産ができなくなりますが、その補償金を元手に村井銀行、東洋印刷、日本石鹸、村井カタン糸等の事業を行い、村井財閥を形成しました。
長楽館が建つ円山は、明治に入ってからリゾート地として栄え、いくつも宿泊施設が建つようになりました。
海外から円山公園に訪れる人も多く、長楽館にも多くの外賓の方々が宿泊しています。
また、国内からも伊藤博文、山県有朋、大隈重信などの賓客が来館しています。
長楽館は、伊藤博文が訪れた時に詠んだ歌の中の漢字3文字から命名されたのだとか。
折上格天井(おりあげごうてんじょう)の十字の金具の中央には、村井家の家紋の三つ柏があしらわれています。
また、シャンデリアはバカラ社製とのこと。
御成の間が、書院造となっているのは、海外からお越しの方に和の風情を感じてもらうためだと伝えられています。
華頭窓からは、京都の北を望むことができます。
また、東側の窓からは、東山も眺めることができますよ。
美術の間と喫煙の間
御成の間を出て、隣の部屋へ。
着物が展示されており、その前に碁盤も置かれていました。
村井吉兵衛が愛用した碁盤なのでしょうか。
バルコニーからは、南側の景色を見ることができます。
2階の美術の間。
現在はカフェスペースとして使われています。
ちなみに京の夏の旅で御成の間を拝観すると、長楽館でのカフェ利用が10%割引になります。
こちらは喫煙の間。
たばこ王が建てた建物らしいですね。
ステンドグラスにも、近代建築物らしさを感じますね。
喫煙の間も、現在はカフェスペースとなっています。
これまで、長楽館の前を通ったことは何度もありますが、中に入ったのは今回が初めてです。
明治に入ってから、京都市内には多くの近代建築物が建ちましたが、長楽館もそのひとつなんですね。
カフェやレストラン利用、宿泊もできますから、旅行や観光で東山を訪れた時は、長楽館で休憩してはいかがでしょうか。