地下鉄五条駅を出ると烏丸五条の交差点です。
この交差点の北西の角に悪王子町という町名が残っています。
また、五条駅からひとつ北にある四条駅の東には、元悪王子町という地名も残っています。
悪王子町と元悪王子町。
何か関係があるのでしょうか?
悪王子社があった場所
実は、悪王子町と元悪王子町の町名には関係があります。
両方とも、悪王子社という社があった場所なのです。
悪王子というのは、素戔嗚尊(すさのおのみこと)の荒魂(あらみたま)のことです。
日本の神さまには、同じ神格に優しく温和な性格の和魂(にぎみたま)と荒々しい性格の荒魂があります。
つまり、悪王子社には、素戔嗚尊の2つの性格のうち、荒々しい方の荒魂が祀られているということです。
だから、「悪」という字がつくのかと思ってしまいますが、ここでいう悪とは善悪の悪ではなく、「すごい」とか「すまじい」とかいった意味で、現代的に言えば「超」といったところでしょうか。
歴史上の人物では、源頼朝の兄の義平が、悪源太義平と呼ばれていました。
元悪王子町とは、その名のとおり、以前、この地に悪王子社があったからその町名がついています。
元悪王子町に悪王子社があったのは、天延2年(974年)から天正18年(1590年)までの約600年間です。
その後、悪王子社は、現在の悪王子町に移転します。
しかし、悪王子町で悪王子社を探しても見つかりません。
それもそのはず、悪王子社は、さらに豊臣秀吉の命により、四条寺町の高島屋付近に移転させられ、その後も四条大和大路に移りました。
四条大和大路は四条大橋の少し東です。
ここに悪王子社があるのだろうと思いますが、今はありません。
一体どこに行ってしまったのでしょうか。
現在は八坂神社の境内に祀られている
四条大和大路に悪王子社があったのは、明治10年(1877年)までです。
その後は、5分ほど東に歩いた辺りに建つ八坂神社の境内に悪王子社があります。
八坂神社の本殿に祀られているのは素戔嗚尊です。
その荒魂を祀った悪王子社が、ここにあるのも何となくうなずける話ですね。
で、この悪王子社は、2013年に修復が終わり、きれいな姿に生まれ変わっています。
上の写真は、修復後の悪王子社ですが、鳥居も狛犬もピカピカですね。
下の写真は修復前の悪王子社です。
以前のは、薄暗くちょっと怖そうな印象を与えますね。
狛犬もいませんでした。
悪王子社の御神徳は、諸願成就です。
何か成し遂げたい事がある方は、悪王子社にお参りすれば、素戔嗚尊の荒魂が手助けしてくれるかもしれませんね。
京都の地名には、元悪王子町の他に元真如堂など、「元」という字がつくことがよくあります。
なぜ「元」なのかということを調べていくと、いろいろと興味深いことがわかりますよ。
なお、八坂神社の詳細については以下のページを参考にしてみてください。