京都市左京区の幡枝(はたえだ)に円通寺というお寺が建っています。
円通寺は、江戸時代に後水尾上皇(ごみずのおじょうこう/ごみのおじょうこう)の幡枝離宮があった地に創建されたお寺で、離宮の庭をそのまま今に伝えています。
離宮の庭と聞くだけで、かなり美しい庭園が存在していることが予想されます。
訪れる前から期待が膨らみます。
奥深さを感じる枯山水庭園
円通寺の境内は、東西に長く、西の端に入口があります。
境内を囲む壁は、人の背よりもかなり高く、外からでは中の様子をうかがうことができません。
門をくぐり、建物内に入って拝観料を納めます。
お寺の中は、庭園以外写真撮影は禁止。
庭園は、大きな石がいくつか置かれた枯山水庭園で、地面には苔が生えています。
石は、氷山のように大部分が地面に埋まっており、3分の1だけが地中に出ています。
じっくり観ていると、石組が大海原の波に見えてくるので不思議です。
庭園は室内から観ると、また違った印象になります。
庭園を海と思うと、まるで、波間に浮かぶ船に乗っているような感じがしますね。
訪れたのが冬だったので、窓のない室内は寒かったのですが、電気カーペットが敷いてあったので、足元はポカポカ。
こういう配慮が嬉しいですね。
庭に取り込まれた比叡山
円通寺の庭園は、それだけ見ていても奥深さを感じますが、しかし、庭がそれほど広くなく、やや地味であるため、物足りなさも感じます。
やはり、背後にそびえる比叡山とともに鑑賞した方が、何倍も魅力的です。
円通寺の庭園から比叡山を眺めると、その雄大さにほれぼれします。
音声ガイドによると、高さ160cmの生垣は、遠近感を感じさせなくしており、まるで比叡山を庭に取り込んでいるように感じさせているとか。
また、近年の開発で近代的な建物が建ち並びましたが、庭園の左側にたくさんの木々を植えて、それらが視界に入らないようにも工夫しているそうです。
境内が東西に長かったり、壁が高かったりするのも、邪魔なものが視界に入らないようにする工夫なのかもしれませんね。
みやこの富士
江戸時代、後水尾上皇は、最も美しく比叡山が見える当地に離宮を造営するのに10年以上も実地調査を行ったとも解説されていました。
ここから見える比叡山は、「みやこの富士」とも呼ばれているそうです。
さらに音声ガイドによると、ここから眺める比叡山は、その時その時で見え方が違うので、今見ている景色と同じ景色をもう一度観賞することはできないそうです。
確かに雲の影一つにしても違った景色に見えますね。
この日、一番美しく見えた比叡山は、山頂に日が差した姿でした。
観ているだけで、不思議と体が暖かくなってきました。
円通寺の庭園から見る比叡山は、写真と実物では全く違います。
写真だと、どうしても平面的になってしまって、比叡山の雄大さを感じることができませんね。
拝観案内に掲載されているプロの写真家の方が撮影した比叡山の写真も、実際の「みやこの富士」とは程遠い姿をしています。
ぜひ、円通寺に訪れて本物の「みやこの富士」を観賞してください。
余談ですが、円通寺の入り口には、比叡山の右肩に満月が浮いている写真が飾られていました。
こんな景色を一度は眺めてみたいです。
なお、円通寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。