水力発電で光る渡月橋の歩道

京都市で人気のある観光地の嵐山には、桂川に渡月橋(とげつきょう)という橋が架かっています。

江戸時代以前に木材だけを使って架けられたような外観をしていますが、車道と歩道はアスファルトに覆われ、バスや自動車が通っても壊れない頑丈な橋になっています。

そんな古めかしい渡月橋ですが、夜になると歩道に設置されている花崗岩でできた行灯が水力発電により点灯するという仕掛けが施されています。

桂川の流れを利用した水力発電

渡月橋には、阪急電車の嵐山駅から北西に約5分歩くと到着します。

JRだと嵯峨嵐山駅から南に徒歩約5分です。

昼間の渡月橋は、桂川の流れと嵐山が調和し景勝地らしい景観を作っています。

昼の渡月橋

昼の渡月橋

渡月橋は、平安時代の初めに道昌(どうしょう)によって架けられたのが始まりと伝えられています。

亀山上皇が、夜空に浮かぶ月を見て、まるで橋を渡っているようだと表現したことから渡月橋の名がつきました。

渡月橋は、何度も洪水で流されましたが、高瀬川や大堰川を開いた角倉了以によって、慶長11年(1606年)に現在地に架けられています。

下の写真は、夜の渡月橋です。

歩道沿いに点々と青白い光が見えるのがわかると思います。

夜の渡月橋

夜の渡月橋

これが、水力発電で灯されている行灯です。

ちなみに上の写真は、今は行われていない嵐山花灯路の時に撮影したものなので、ライトアップされていますが、普段はこのように明るくはありません。

現在の渡月橋が架けられた時は江戸時代ですから、現代のような照明施設を建設前の設計段階で取り付けることなんて考えられていません。

当然ながら、江戸時代はとても暗かったはずです。

それが、水力発電によって夜も明るく安全に渡月橋を渡れるようになったのですから、科学技術の発展には敬服します。

ところで、渡月橋の行灯を点灯させるための水力発電はどこにあるのでしょうか。

渡月橋を渡ったことがある方なら、周辺に発電所のような大掛かりな施設を見たことはないと思います。

それもそのはず、水力発電所は、あまりに小さいため、その存在に気づく人はほとんどいません。

渡月橋を南から北に向かって、左側の歩道を歩いていき、対岸に到着する辺りで左に目をやると、水の流れに段差ができているのが見えます。

その水の段差の一番岸に近い部分にある大きな石の上に小型発電所が設置されています。

下の写真の中央部分に写っているのが、その小型発電所です。

小型発電所

小型発電所

小型発電所が稼働を始めたのは、平成17年(2005年)のことで、最大出力は5.5キロワットです。

エアコンを10台同時に使える程度しか発電できませんが、渡月橋の足元を照らす程度であれば、これくらいの電力で十分のようです。

桂川は一級河川ですが、水力発電所を一級河川に設置したのは、桂川が日本で初めてとのこと。

昔ながらの景観が残る渡月橋付近ですが、技術面では、最先端を走っているんですね。

嵐山の寺院では、年に何度か夜間拝観が実施されます。

その時に嵐山を訪れた際は、水力発電で灯された夜の渡月橋も歩いてください。

なお、渡月橋の詳細については以下のページを参考にしてみてください。

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