寺院には、山門と呼ばれる入り口があります。
山門の中には、三門と表記するものもありますね。
三門は、空門(くうもん)、無想門(むそうもん)、無作門(むさもん)からなる三解脱門(さんげだつもん)のことで、涅槃(ねはん)に達するために必ず通らなければならない門とされています。
京都市東山区の東福寺にも、大きな三門がありますが、これは現存する最古の三門として国宝に指定されています。
応永12年の建立
東福寺の最寄り駅は、JRも京阪電車も東福寺駅です。
駅からは、南東に5分ほど歩くと東福寺に到着します。
東福寺の三門は、境内の南側に建っています。
東福寺の伽藍が完成したのは、建長7年(1255年)ですが、14世紀前半に全焼しています。
伽藍が全焼した後に再建が着手されると、三門が応永12年(1405年)に完成します。
現在の三門が建てられたのは、今から600年以上も前なんですね。
五間三戸の二階二重門
三門は、二階二重門なので、上方の四方に庇(ひさし)がのびた入母屋造(いりもやづくり)、本瓦葺の屋根の下に2階部分があります。
下側の屋根の下は、五間三戸、すなわち、正面が5つに区分され、真ん中の入り口部分が3つになっています。
入り口が3つあるから三門なんですね。
2階部分の屋根の下には、室町幕府4代将軍の足利義持の筆になる「玅雲閣(みょううんかく)」の扁額が掲げられています。
東福寺の説明書によると、「玅」は、女偏の「妙」が一般的ですが、「玄」の偏を用いることで、本来の「玄」の意味である「奥深い道理」の意味を添え、「妙」の意味の「真理・美しい」を強化しているのだとか。
この扁額は、遠くからしか見ることができないので、小さく感じますが、その大きさは畳3畳分もあるそうです。
東福寺の三門は、構造的には、鎌倉時代初期の東大寺の再建時に取り入れられた大仏様(だいぶつよう)ですが、視覚的には禅宗様となっています。
そういえば、どことなく東大寺の南大門に似ていますね。
2階には、内陣中央に35歳と言われる宝冠釈迦如来坐像、左前に月蓋尊者、右前に善財童子、両列に十六羅漢が安置され、周りには五百羅漢とも森羅万象ともいわれる木片が置かれています。
また、天井や柱には、極楽に住む人面鳥身の架空の鳥である迦陵頻伽(かりょうびんが)や飛龍が極彩色で描かれており、金襴巻や牡丹唐草などで天上界が表されています。
普段は、三門に上がることはできませんが、特別公開が実施されるときには内部を拝観できますよ。
横から三門を見ると、階段を覆う山廊があるのがわかります。
また、三門の大屋根の四隅に角柱があるのも見えます。
この角柱は、天正大地震による三門の傷みを天正13年(1586年)に豊臣秀吉が、大修理をした際に補足した柱で、太閤柱と呼ばれています。
三門の南側には、思遠池と呼ばれる池が配されています。
普段は、ただ水が入っているだけなのですが、夏になると、一面が緑色となり、たくさんのハスの花が咲き誇ります。
ハスが咲いている時期が、最も三門が美しく感じられますね。
三門は、いろんなお寺にありますが、国内で現存する最古の三門は、東福寺にあります。
普段は内部の拝観はできませんが、境内に入るだけなら無料なので、誰でも自由に三門の外観を眺めることができます。
秋の紅葉の時期は大混雑しますが、それ以外の時期だと人が少ないので、落ち着いて三門を鑑賞できますよ。
なお、東福寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。