京都市右京区の天龍寺の庭園に大きな硯が縦にして置かれています。
様々な草花を観賞できる庭園に、突如、巨大な硯が出現するので、初めて天龍寺を訪れた方は驚くかもしれませんね。
この硯は、硯石と呼ばれており、拝むと書画が上達すると伝えられています。
鈴木松年画伯が描いた雲竜図
下の写真に写っているのが、その硯石です。
人の背くらいの大きさはあるでしょうか。
倒れてきて下敷きになると危険なので、あまり近づいて見ない方が良さそうに思うのですが、近くで拝みたくなるのが人の性というもの。
しっかり固定されているようなので、倒れてくることはなさそうですが、万が一のことを考えると、少し離れて拝んだ方が良いですね。
明治32年(1899年)。
天龍寺の第三代官長の峨山和尚が選仏場(坐禅堂)を法堂(はっとう)として再建しました。
その時、天井に仏法を守護するとされる龍の大画を鈴木松年画伯に依頼しました。
依頼を受けた鈴木画伯は、60数人の修行僧が摺った墨を用い、大筆で一気に勇壮な雲竜図を描き上げたそうです。
現在、鈴木画伯の雲竜図は法堂の天井には描かれていません。
平成9年(1997年)に加山又造画伯によって新しい雲竜図が描かれ、それが法堂の現在の天井画となっています。
庭園に置かれている硯石は、峨山和尚と鈴木松年画伯の遺徳を偲ぶよすがとして残されたということです。
そして、誰が言い出したのかわかりませんが、硯石を拝むと書画が上達すると言われるようになり、今では全国各地から人が訪れるようになっているとのこと。
硯石が庭園に置かれて、まだそれほど年月を経ていませんが、天龍寺は春と秋の観光シーズンに多くの参拝者で賑わうので、書画が上達するという噂が短期間に一気に広まったのかもしれません。
書道や水墨画、その他の書や絵画をされている方は、硯石を拝みに天龍寺に参拝するとご利益を授かれそうです。
そして、日々練習すれば、庭園の隅に置かれている「一滴之碑」のような達筆になれるかもしれませんね。
ちなみにこの一滴之碑も、硯石が置かれたのと同じ平成9年に置かれました。
碑文の「一滴」は、開山の夢窓疎石(むそうそせき)が曹源池(そうげんち)と題して詠んだ偈頌(げじゅ)の一節です。
これくらい立派な文字が書けるようになると、自筆の手紙や年賀状を出すのが楽しくなりそうですね。
なお、天龍寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。