京都市伏見区に建つ伏見稲荷大社の境内には、キツネがたくさんいます。
キツネと言っても、生きているキツネではなく狛狐なのですが、とにかく境内のいたるところにいます。
狛狐は正式には眷属(けんぞく)や白狐(びゃっこ)と言うそうです。
伏見稲荷大社のキツネを見たことがある人は気づいていると思いますが、口に何かをくわえていますよね。
それも同じものではなく、様々なものをくわえています。
狛狐がくわえているものは、稲穂、巻物、鍵、玉の4種類です。
口に物をくわえている狛狐たち
伏見稲荷大社は、JR稲荷駅の改札を出てすぐの場所に建っています。
第一鳥居の前では、金色の物をくわえているキツネが、やや逆立ち気味にお出迎え。
初めて見た時は、油揚げをくわえているのかと思ったのですが、くわえているのは稲穂です。
伏見稲荷大社は、商売繁盛の神さまとして有名ですが、昔は五穀豊穣の神さまとして崇敬されていました。
これを知っていれば、キツネが稲穂をくわえていることに納得できますよね。
社務所の近くにいるキツネは巻物をくわえています。
巻物は知恵をあらわしているそうです。
神社のキツネが巻物をくわえていても、違和感はありませんね。
楼門の前にいるキツネがくわえているのは鍵です。
そして、玉をくわえているキツネは、お山めぐりの出口付近にいます。
玉は小さいので、意識してキツネを見ていないと素通りしてしまいますので注意してください。
なぜ鍵と玉をくわえているのか?
ところで、なぜ鍵や玉をくわえているキツネがいるのでしょうか。
その答えは、以前に紹介した「タイムトラベル もうひとつの京都」という本に書いてあります。
伏見稲荷大社には、玉鍵の信仰があるそうです。
「玉は稲荷神の霊徳の象徴で、鍵はその御霊を身につけようとする願望である」とか、「この玉と鍵は、陽と陰、天と地を示すもので、萬物は、この二つの働きによって、生成し化育する理を表している」と意味づけられているとのこと。
さらに興味深いことが書いてありました。
花火が打ち上げられる時、「たまや~」とか「かぎや~」とか掛け声をかけますよね。
実は、あれ、伏見稲荷大社のキツネがくわえている玉と鍵に由来しているのです。
ところで、花火が打ち上げられる時の掛け声「玉屋ぁ、鍵屋ぁ」は、花火屋の屋号のことだ。なぜ玉と鍵なのか。これは稲荷信仰と関係している。江戸時代の花火や「鍵屋」と「玉屋」の屋号は、お稲荷さんの狐が鍵と玉をくわえていることに由来する。ちなみに、鍵屋からのれん分けした玉屋は、失火により廃業したが、鍵屋は現在もなお続いている。
江戸時代になると、お稲荷さんは、商売繁盛の信仰も強まっていました。
もしかしたら花火屋だけでなく、それ以外の商売でも屋号に鍵屋や玉屋と付けていたお店があったかもしれませんね。
これから商売を始める方は、屋号や店名に「鍵」や「玉」を入れると繁盛するかもしれませんよ。英語で「キー」や「ボール」にしてもご利益があるのかどうかはわかりません。
何もくわえていない狐もいる
さて、伏見稲荷大社のキツネは、必ず稲穂、巻物、鍵、玉のいずれかをくわえているのでしょうか。
実は、そのようなことはなく、下の写真のように何もくわえていないキツネもいます。
伏見稲荷大社のキツネは、ほとんどが稲穂、巻物、鍵、玉の内のいずれかをくわえていますが、たまに何もくわえていないキツネがいます。
なぜ、何もくわえていないのか、その理由はわかりません。
何もくわえていないキツネは、見つけるのが難しいですが、最も簡単に見つかるのは、本殿の前の石段近くにいるキツネです。
本殿に参拝する前に確認してください。
他にも、下の写真のように逆立ちしながら竹筒をくわえているキツネもいますよ。
こちらのキツネは、お山めぐりの眼力社の近くにいます。
竹筒の先から水が流れ出ているので、これが手水なのでしょうね。
本殿から眼力社に行くには、30分ほどかかりますが、珍しいキツネなので一度は見ておきたいですね。
伏見稲荷大社に参拝した時は、ぜひ、稲穂、巻物、鍵、玉をくわえているキツネを探してください。
もしかしたら、違うものをくわえているキツネに出会えるかもしれませんよ。
なお、伏見稲荷大社の詳細については以下のページを参考にしてみてください。