京都市南区の五重塔で有名な東寺には、瓢箪池(ひょうたんいけ)と呼ばれる大きな池があります。
この瓢箪池があるから、五重塔の眺めが絵になるんですよね。
きっと昔の人が、池泉回遊式庭園を境内に造れば、四季折々の景色を楽しめるに違いないと考えて、瓢箪池を造ったんだろうなと、思っていたのですが、どうもそういった理由で造られたわけではないようです。
では、鑑賞用でなければ、いったい何のために瓢箪池を造ったのでしょうか。
美しい庭園
東寺の五重塔は、境内の南側に建っています。
その北側に配されているのが瓢箪池です。
池越しに眺める五重塔が風情があるんですよね。
初夏になると、池のほとりではサツキの花が咲き、晴れた日には、池から顔を出している石の上にたくさんの亀が上がって、甲羅干しをしている景色を見ることができます。
この景色が何とものどかで、心が和むわけですよ。
また、春には、池を囲むようにたくさんの桜が咲き、とても華やかになります。
こういった景色を見ていると、瓢箪池は鑑賞用に造られたように思ってしまいますよね。
傾いた五重塔
東寺が創建されたのは、平安時代でした。
瓢箪池も、創建当時からあったと思われがちですが、造られた年代は、よくわかっていません。
一説によると、防火用水の確保のためといわれていますが、確証はありません。
瓢箪池が造られた理由については、興味深い話が残っています。
江戸時代。
京都に強風が吹きました。
この強風で、なんと五重塔が傾いてしまいました。
傾いた五重塔は、いったん解体し、もう一度建て直して現在のまっすぐな姿に戻したのだろうと思いますよね。
でも、そのような作業をせずに五重塔は、まっすぐの姿に戻ったそうです。
では、どうやって傾いた五重塔をまっすぐにしたのでしょうか。
そのカギを握っているのが瓢箪池です。
「傾いた五重塔を元に戻すには、反対側の地面に大きな穴を掘ってしまえば良いのではないか」
そう考えて、実際に五重塔の北側に大きな穴を掘ったところ、南に傾いた五重塔が元に戻ったそうです。
工事で掘られた穴には、その後、雨が降って水が溜まりました。
これが、現在の瓢箪池だというわけです。
この話は、三浦俊良氏の著書「東寺の謎」に載っています。
でも、事実かどうかはわからないようで、謎も多く残っています。
五重塔は花崗岩でできた基壇の上に建っている。巨大な穴を掘って傾きを直したというのであれば、基壇もろとも五重塔は傾いたということになる。
(中略)
しかも穴を掘ったというのであれば、基壇の下の部分まで土を除かなくてはならない。途方もなく大きな穴を掘らなくてはならないだろう。
自伝には具体的な修理の方法は記載されていない。今となっては事実かどうかも分からない。謎のままである。
上は、「東寺の謎」からの引用です。
この話が本当かどうかは、瓢箪池の造営時期がいつかということにかかっているわけですね。
もしも江戸時代に瓢箪池が造られていたのなら、穴を掘って傾きを直すという奇想天外な発想が、建築業界で研究され始めるかもしれませんよ。
なお、当時の詳細については以下のページを参考にしてみてください。