京都市東山区の東福寺は、京都屈指の紅葉の名所として知られていますが、三門など諸堂も立派な建物ばかりです。
そのため、東福寺に参拝した時は、建物もしっかりと見ておきたいですね。
その東福寺の諸堂の中には、東司(とうす)と呼ばれる建物が建っています。
東司とは聞きなれない建物でありますが、実はトイレのことです。
100人便所と呼ばれる東司
東福寺の最寄り駅は、JRも京阪電車も東福寺駅です。
駅からは南東に5分ほど歩くと、東福寺に到着します。
東司は、境内の南側にあるので、南の入り口となっている六波羅門から境内に入るのがおすすめです。
六波羅門の最寄り駅は、京阪電車の鳥羽街道駅で、徒歩約10分で到着します。
下の写真に写っているのが東司です。
細長い切妻造り禅宗様式の建物の東司は、俗に百雪隠(ひゃくせっちん)や百間便所と呼ばれています。
子供たちは、100人便所とも呼んでいます。
東司の近くに設置されていた説明書によると、東司は禅堂の横に必ずおかれると記されていました。
確かに東福寺の東司の北隣にも禅堂が建っています。
東福寺の東司は、室町時代に建てられたもので、日本最古最大であり、現存する唯一の遺構だそうです。
また、明治35年(1902年)6月31日に重要文化財の指定を受けています。
東司の中を覗くと、たくさんの穴が空いています。
これが用を足すための穴のようです。
以前に紹介した書籍の京都「地理・地名・地図」の謎には、トイレで用を足すことも修行のひとつで、厳しい作法が定められていたと述べられていました。
まず、着ている法衣を脱いで丁寧にたたみ、黄色の土団子と水桶を持って厠に上る。厠の前でわらじに履き替え両足で台を踏みうずくまって用を足す。このとき、決してあたりを汚したり、笑ったり、歌ったり、唾を吐いたりしてはいけない。
用が済んだら紙かヘラで拭き、右手で水を散らさないように流して壺を洗う。手洗い所に戻ったら手を三度洗う。ついで灰で三度、土団子で三度、サイカチ(植物の葉)で一度洗い、その後改めて水や湯で手を洗う。
ただ、トイレに行くだけでも、このような決まりがあったんですね。
臨済宗の修行は、とても厳しかったことがうかがえます。
ところで、東司に溜まった排泄物はどうしていたのでしょうか。
東福寺の説明書によると、当時、排泄物は貴重な堆肥肥料であり、京野菜には欠かせない存在だったことから、これを売って現金収入を得ていたそうです。
東司は、京都の公家、武家、庶民の台所に美味しい野菜を届けるためにも役立っていたんですね。
東福寺の東司は、中に入ることができませんが、特別公開されることがあれば、内部がどのようになっているのか詳しく見ておきたいですね。
なお、東福寺の詳細については以下のページを参考にしてみてください。