6月初旬。
季節は、そろそろ初夏から梅雨に移る頃。
しばらくは雨の日が多くなるだろうと思い、晴れた日を選んで京都散策に出かけました。
今回の散策は、京都市左京区にある無鄰菴(むりんあん)です。
これまで無鄰菴には、一度も行ったことがありませんでした。
存在すら忘れていたのですが、どこかに初夏に鑑賞するのに良さそうな庭園がないかとガイドブックを探していて、無鄰菴を思い出した次第です。
広がる芝生と庭園を囲む木々
無鄰菴は、地下鉄蹴上駅から北に7分ほど歩いた辺りに建っています。
近くには京都市動物園があるので、駅から動物園を目指せば無鄰菴にたどり着けるでしょう。
いかにもお屋敷といった感じの広い敷地を塀が囲っています。
その1ヶ所に入口があり、「名勝 無鄰菴庭園」と刻まれた石柱が近くに立っています。
敷地内に入って拝観受付へ。
無鄰菴の拝観料は410円です。
庭園に入ります。
まずは、洋館で無鄰菴のパネル展示が行われていたので、それを見て知識をつけておくことに。
無鄰菴は、明治大正時代の元老山県有朋が建てた別荘です。
庭園を手掛けたのは、7代目小川治兵衛ですが、造園の指示をしたのは山県有朋です。
庭園には母屋があります。
拝観者は、その中に入って庭園を鑑賞できます。
母屋は、庭園の西側に東を向いて建っています。
靴を脱ぎ縁側に座って庭園を鑑賞。
さらに室内でのんびりとあぐらをかきながら東向きに庭園を眺めます。
母屋の東側の縁側に進み、庭園全体を鑑賞することに。
木々に囲まれた空間に広がる芝生、その間を流れる水、奥には東山も見えます。
何とも穏やかな風景であります。
庭園内を散策
無鄰菴の庭園を見ていると、周囲に何もない場所に作庭されたかのように感じますが、実際はそうではありません。
先ほども述べましたが、近くには動物園もあります。
琵琶湖疏水記念館もあれば、車の通りが多い道路もあります。
庭園の手入れは、以前は伸びてきた木々の枝を伐る程度で、現状を維持するような感じだったそうです。
でも、平成19年(2007年)より、京都市がプロポーザル入札制度を導入し、庭園の魅力を引き出す提案をした団体から適切な管理者を選んで管理を委託しました。
そして、現在では、植彌加藤造園株式会社が無鄰菴の管理を行っています。
以前の手入れの仕方だと、木々が生長すると、上の方には枝があっても、下の方は枝がない状態でした。
そうなると、枝のないところから、動物園やその他の建物など周囲の景色が見えてしまい、無鄰菴庭園の魅力が損なわれてしまいます。
そこで、木々の手入れの仕方を変更し、木の下の方からも枝が伸び、葉で周囲の景色を隠す工夫がされました。
そのおかげで、現在では、無鄰菴の中からは外の景色が見えなくなり、まるで自然の中にいるかのような雰囲気を味わえるようになっています。
庭園の東の端から流れてくる水。
背落ちが、爽やかな水の音を作り出しています。
庭園の中を散策しましょう。
山県有朋は、苔ではなく芝生を使った庭園を造るように指示したため、無鄰菴の庭園は他の日本庭園とは違った趣があります。
紫色の花をきれいに咲かせたハナショウブ。
庭園の奥へと進んでいくと、びっしりと苔が生えた空間がありました。
この苔は、自然に遷移したものだとか。
当初は芝生を好んだ山県有朋も、後に苔の美しさを受け入れたようです。
庭園の東の奥には、三段の滝があります。
無鄰菴を流れる水は、琵琶湖疏水から引き入れたものです。
庭園の奥に滝があることで、まるで、東山から水が流れ落ちてきたように感じさせます。
水が流れていく方向を眺めます。
まるで、山の中を流れていく川のようであります。
無鄰菴の近くには、南禅寺や平安神宮など有名な寺社が多くありますが、それらにお参りをした後は無鄰菴にも立ち寄って、のんびりと休憩しながら庭園を眺めるのも良いですね。
なお、無鄰菴の詳細については以下のページを参考にしてみてください。