毎年、夏になると京都市観光協会が催す「京の夏の旅」という非公開文化財の特別公開があります。
この企画は、普段、公開されない文化財を見ることができるので、なかなか貴重です。
2013年の「京の夏の旅」で公開されることになった京都市東山区の大雲院には、祇園閣という背の高い建物があります。
一番上まで登ることができるということなので、公開が始めってまだ数日しか経っていない7月17日に大雲院を訪れました。
京都市内を一望できる祇園閣
大雲院は、八坂神社と高台寺の間に建っています。
最寄駅は、京阪電車の祇園四条駅で、そこから東に10分ほど歩くと到着します。
祇園の和風の建物が並ぶ中に突如として現れる背の高い銅色の建物は、違和感があります。
とは言え、何度も見ていると、慣れてくるもので、今では祇園の街並みを頭の中で想像すると、この祇園閣が思い浮かびますね。
入口で拝観料600円を納め、門をくぐります。
順路に従い本堂を過ぎて、祇園閣の真下へ。
祇園閣は、高さ36メートル、3階建ての建物で、鉄筋コンクリート造です。
建てられたのは昭和3年(1927年)。
ホテルオークラの創業者の大倉喜八郎が創建しました。
実は、大雲院が建つこの地は、大倉喜八郎の別荘でした。
で、大雲院はというと、現在の四条河原町の高島屋付近に建っていました。
ガイドの方の話によると、あの辺りは、繁華街となったことから、お寺が建つにはあまりよろしくない場所ということで、高島屋と土地を交換し、昭和48年に当地に移ってきたということです。
祇園閣の入口は、石垣の真ん中にあります。
この石垣、よく見ると左右対称になるように石が組まれているんですよね。
左右対称にするということは、同じような形の石を2つ用意しないといけません。
同じ形の石を見つけ出すだけでも、かなりの苦労があったことでしょう。
入口の左右には、狛犬ならぬ狛ライオンが座っています。
入口の上に架かっている「祇園閣」の文字は西園寺公望が書いたもの。
達筆ですね。
では、祇園閣に上ることに。
建物内部の壁には、昭和63年に大雲院開創400年を記念して描かれた敦煌(とんこう)の壁画が描かれています。
これらは模写ですが、見ていると、どこか中東あたりの洞窟の中を探検しているような気分になります。
ちなみに祇園閣内の写真撮影は禁止です。
壁画を見ながら最上階まで上ると、目の前に東山が現れます。
山の斜面には、たくさんのお墓があります。これは、京都霊山護国神社の墓地で坂本竜馬や中岡慎太郎のお墓もあります。
南の方角を眺めると、八坂の塔が見えます。
少しばかり見下ろすような感じですね。
京都タワーも見えます。
西側を向くと、下京区や中京区の街並みが見えます。
ここから祇園祭の山鉾巡行を見ようと思ったのですが、残念ながら建物に隠れて見えませんでした。
さらに北側へ。
平安神宮の大鳥居、その右奥に金戒光明寺の山門と御影堂が見えます。
雄大にそびえる比叡山が見事です。
ここからの眺めは、とても気持ちいいですね。
京都は山に囲まれているので、そのどれかの山に上れば、京都の街を望むことができますが、一定の方角しか見ることができません。
それに比べて祇園閣からだと、どの方向も眺めることができます。
思わず、通路をグルグルと何周もしたくなりましたよ。
ただ、残念だったのが、祇園閣からの眺めも写真撮影が禁止だったことですね。
なので、写真はありません。
金色の鶴
地上に降りて、再び祇園閣を下から見上げることに。
ところで、祇園閣の屋根の部分は、どこかで見たことがないですか。
実は、祇園閣は、祇園祭の山鉾を模して建てられたものなんですよね。
本物の山鉾は、祇園祭が終わると、1年間見ることができません。
なので、山鉾を見ようと思うなら、山鉾巡行が行われる7月17日とその数日前から催される宵山しか機会がないわけです。
これでは、この期間以外に京都に訪れた方は山鉾を見ることができません。
そこで、大倉喜八郎は、一年中、山鉾を見ることができるようにと祇園閣を建てたのです。
境内に入らなくても、外からでも祇園閣を見ることはできますので、祇園祭以外の時期に京都にお越しの場合は、祇園閣を眺めて、山鉾を想像してみるのも良いのではないでしょうか。
祇園閣の屋根の上には、鳥がいます。
こういった屋根の上にいる鳥は、多くの場合、鳳凰なのですが、祇園閣では、金色の鶴が翼を広げて立っています。
ガイドの方の話によると、大倉喜八郎の子供の時の名に鶴の文字が入っていたことが理由で、屋根の上に金色の鶴を立たせたということです。
もともとは、傘を反対向きにして立てる予定だったそうですが、あまりに奇抜すぎるので、周囲の反対にあい、鶴に替えたらしいですよ。
大雲院の特別公開は9月30日までです。
祇園閣の他に本堂の五百羅漢の図、宝物館の織田信長とその子の信忠の肖像画、富岡鉄斎や円山応挙の絵画、歴史的価値のある陶器なども鑑賞できますよ。
なお、大雲院の詳細については以下のページを参考にしてみてください。