京都市東山区の知恩院には、庭園が2つあります。
ひとつは、御影堂(みえいどう)の北東にある方丈庭園です。方丈庭園の拝観受付は、御影堂に隠れて気付きにくいのですが、それ以上に気付きにくいのが、もうひとつの庭園の友禅苑です。
宮崎友禅斎ゆかりの庭
友禅苑の入り口は、三門をくぐった右側にあります。
多くの方が、三門をくぐった先にある石段を上ることに集中しているためか、友禅苑の入り口に気付かないようです。
友禅苑の拝観料は300円です。
方丈庭園との共通拝観券が500円なので、こちらを購入するのがお得です。
友禅苑に入って最初に目にするのが、下の写真に写っている池泉庭園の普陀楽とその中心に立つ観音像です。
この観音像は、知恩院第76世立誉行戒上人の記念塔で、明治31年(1898年)に高村光雲が竣工したものだそうです。
池の近くには、宮崎友禅斎の像もあります。
宮崎友禅斎は、江戸時代の絵師で、京友禅の始祖として知られています。
その友禅斎の生誕300年を記念して昭和29年(1954年)に造られたのが、この知恩院の友禅苑なのです。
友禅斎の像から西に進むと、枯山水庭園の鹿野苑が現れます。
庭園の案内板によると、釈尊が鹿の楽園として保護し、施鹿林と称したことから鹿野苑と呼ばれるようになったとか。
そして、法然が念仏を広めた場所に釈尊のご縁にならって南国の景色を枯山水に表現したのが、この鹿野苑だそうです。
また、鹿野苑の脇には、2本の枝垂れ桜が植えられており、春になると薄紅色の花が薄墨色の庭園に明るさを加えてくれます。
立身出世の関門を越えて2つの庵へ
鹿野苑の次は、庭園の東側へ向かいます。
その途中に兎門(うもん)という門が建っています。
兎門の名は、中国古代の伝説上の王の兎に由来し、立身出世の関門という意味があるそうです。
ということは、この門をくぐれば立身出世の関門を越えたことになるのですね。
もちろん私もくぐってきましたよ。
兎門をくぐり、庭の奥に進むと華麓庵(かろくあん)という茶室が建っています。
この華麓庵は、法然の浄土宗開宗800年を記念して、昭和43年に庭園の大改修が行われた際、大沢徳太郎氏の別邸の茶室を移築したものです。
やはり、日本庭園には、こういった落ち着きのある茶室が似合いますね。
華麓庵の近くには、白寿庵という茶席もあります。
庭園内のやや高い位置に建っており、その脇には、普陀楽へと流れる小川があります。
川の流れる音を聞いていると、心が清められていくようです。
以上が、友禅苑の大まかな見どころです。
知恩院に参拝した時は、友禅苑も拝観してみてください。