3月末に京都府綴喜郡井手町の玉川堤の桜を見に行った時、蛙塚(かわづつか)にも立ち寄りました。
蛙塚なるものをこれまで見たことがなかったので、いったいどのような場所にどのようなものがあるのか興味津々であります。
清水が湧き出た玉の井
蛙塚は、JR玉水駅から北東に5分ほど歩いた辺りにあります。
道に何度も迷いながら、民家に挟まれた道路を進み、蛙塚の入り口にやって来ました。
住宅の入り口のような感じですが、上の写真の左側に写っているように蛙塚の案内があるので、ここで間違いないはずだと思い直進。
すると、石がたくさん置かれた敷地が現れました。
どうやら、ここが蛙塚のようです。
蛙塚の説明書によると、このあたりは玉の井と呼ばれており、湧水がこんこんと湧き出ていたそうです。
「その昔は、大和路を行き交う人々は、この湧き出る清水で喉の渇きを潤すとともに、水辺に遊ぶ蛙の声で旅の疲れを癒したことと思われます」と書かれていました。
旅人にとって、ここは休憩所だったんですね。
井手の里は、玉川の清らかな流れと河岸に咲くヤマブキの花がきれいで、万葉の昔から平安、鎌倉、江戸と時代を紡いで数々の和歌に詠まれてきたのだとか。
なかでも美しい歌声を聞かせる蛙(かわづ)は、井手の枕詞として用いられるほど、数多く詠まれているそうです。
蛙塚の敷地には、三十六歌仙のひとり藤原興風(ふじわらのおきかぜ)の歌碑が置かれています。
刻まれている歌は、以下になります。
あしびきの 山吹の花 散りにけり 井でのかわつは 今や鳴くらむ
この歌にも、しっかりと「かわつ」という言葉が入っていますね。
訳は、「やまぶきの花が散ったことだ。今頃井手の蛙は盛んに鳴いているであろう」となります。
こちらは、玉の井を示す石碑です。
玉井寺跡とも刻まれているので、ここには、かつて玉井寺というお寺があったのでしょうね。
蛙塚には、石で作られた蛙が何匹かいましたよ。
地面にも歌が刻まれていますね。
「九重に 八重山吹を うつしては 井手のかわづの 心をのぞくむ」と歌われており、ここにも「かわづ」が登場しています。
私が蛙塚を訪れた時は、他に誰もいませんでした。
今は、井手観光の休憩に蛙塚に立ち寄る人は少ないようです。
どこかのお店に入って休憩しますからね。
でも、ひっそりと静まり返っている方が、どこからかカエルの歌声が聞こえてきそうで、蛙塚らしさを感じます。