京都にある三井発展の地・三井越後屋京本店記念庭園

京都市中京区の二条室町を歩いていると、立派なお屋敷があるのに気づきました。

まるで江戸時代のお屋敷のように瓦が乗った塀に囲まれていたので、大金持ちの方の邸宅なのだろうと思い、外から眺めていたのですが、どうも、居住空間であるべき建物が見当たりません。

一体、この敷地は何なのだろうと、門の前に行ってみると、そこには、「三井越後屋京本店記念庭園」と刻まれた石柱が立っていました。

どうやら、三井越後屋の建物跡のようですね。

現金掛け値なし

三井越後屋呉服店は、三井高利が延宝元年(1673年)に江戸の日本橋本町に創業したのが始まりです。

越後屋は、代官とつるんで悪いことをしている商人という印象を持っている方もいるでしょうが、あれは時代劇の創作なので、三井越後屋呉服店とは関係がありません。

三井越後屋呉服店と言えば、「現金掛け値なし」の商売で有名です。

江戸時代は、お店で商品を買った時に代金を払うのではなく、節季払いといって年に何回かまとめて代金を支払う仕組みとなっていました。

でも、三井越後屋呉服店は、そうではなく、店頭で商品を引渡すと同時に代金を受け取るという、今では当たり前になっている商売をしたんですね。

そうすることで、販売代金をすぐに現金で受け取ることができ、お店にとっては大きな利点がありました。

また、商品を買うお客さんにとっても、「現金掛け値なし」は魅力的でした。

まず、後払いにすると、商品の引渡しから代金の決済までの期間の利息を支払わなければなりませんが、現金払いなら利息を払う必要はありません。

そして、利息を上乗せした掛け値ではなく、公正価格で取引が行われるので、お客さんは、安心して商品を買うことができました。

今では、当たり前となっているので、「現金掛け値なし」という言葉も忘れられつつありますが、その基礎を作ったのは、三井越後屋呉服店だったんですね。

京都の拠点

下の写真に写っているのが、三井越後屋京本店記念庭園です。

外観

外観

ここは、江戸時代、三井越後屋呉服店の京都の拠点でした。

当時の商人は、京都を拠点として江戸で商売をする江戸店持京商人(えどだなもちきょうあきんど)という営業形態を理想としていました。

三井越後屋呉服店も、その営業形態を採用し、京都で西陣織や小間物を仕入れ、また、長崎で輸入された唐の反物などを京都に運び込んでいました。

今でも、小売店の経営は、商品の仕入れがうまくいくかどうかにかかっていますが、江戸時代もそれは同じで、京都に仕入れの拠点を置くことが重要だったんですね。

三井越後屋呉服店の京都の拠点は、当初は室町通蛸薬師東側北寄りにあったのですが、そこが手狭となったため、宝永元年(1704年)に現在の記念庭園がある地、すなわち二条室町に移転しました。

石柱

石柱

記念庭園は、昭和58年(1983年)まで三越京都支店として営業を続けていました。

江戸時代からそんなに長くお店が続くなんて立派なことですね。

現在は非公開となっていて庭園を見ることが出来ませんが、「京都を感じる日々★古今往来Part1・・・京都非観光名所案内」さんの下記記事に写真が掲載されているので、中の様子を知ることができますよ。

また、三井越後屋京本店記念庭園の詳細については、三井広報委員会のWEBサイトをご覧になってください。