かにかくに 祇園はこひし 寝る時も 枕のしたを 水のながるる
上の歌は、吉井勇(よしいいさむ)が明治43年(1910年)に詠んだもので、彼の歌集である「酒ほがひ」に収録されています。
この歌をどこかで見たことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もし、京都で見た気がするなら、おそらく、そこは祇園でしょう。
祇園にそれとなく置かれた歌碑
祇園の巽橋から100メートルほど西に進んだところに下の写真に写っている歌碑が置かれています。
この歌碑は、「かにかくに碑」と呼ばれ、最初に紹介した吉井勇の歌が刻まれています。
「かにかくに」とは、蟹の角煮ではありません。
国語辞典で調べたところによると、その意味は、「とかく」とか「あちらこちらと」と記載されていました。
吉井勇は、祇園をこよなく愛した歌人として知られています。
彼が70歳になった昭和30年(1955年)11月8日。
古希のお祝いとして、かにかくに碑が建立されました。
発起人は、四世井上八千代、大谷竹次郎、大佛次郎(おさらぎじょろう)、久保田万太郎、里見敦(さとみとん)、志賀直哉、新村出(しんむらいづる)、杉浦治郎右衛門、高橋誠一郎、高山義三(たかやまぎぞう)、谷崎潤一郎、堂本印象(どうもといんしょう)、中島勝蔵(なかじまかつぞう)、西山翠嶂(にしやますいしょう)、湯川秀樹、和田三造といったそうそうたるメンバーです。
かにかくに祭
かにかくに碑が建立されて以来、毎年11月8日になると、この場所で「かにかくに祭」が行われるようになりました。
かにかくに祭は、祇園の舞妓さんが、かにかくに碑に献花します。
一般の人が観れるのは、この部分だけで、時間にして約10分程度です。
それでも、一目舞妓さんをみようと、道路には溢れんばかりの人だかりができます。
春は桜が満開
さて、かにかくに碑がある辺りは、昔ながらの京都の町並みを残している地域として知られており、多くの観光客の方が訪れます。
春になると道路の脇に植えられた桜が満開となり、この時期は、特に観光客の方で賑わいますね。
この時期は、さすがに桜が主役となるので、あまり、かにかくに碑をじっくりと観る人がいません。
2010年のかにかくに祭の時に歌碑の説明板がたてられたので、お花見の際にちょっとだけでも読んでみてはいかがでしょうか。