京都観光の目的が、「歴史上の事件の跡地を見ること」という方も多いのではないでしょうか。
応仁の乱や本能寺の変など、歴史上の有名な事件の跡地には、ほとんどの場合、石碑が置かれています。
こういった石碑を発見すると、「ここがあの事件が起こった場所なのか」と妙に感慨深くなりますね。
ただ、私の場合、石碑に書かれている文字が難しすぎるため、事件名だけを見て満足することが多いのですが。
しかし、石碑に書かれた難しい文字まで読んでしまう方もいるようです。
「京都石碑探偵」という本の著者の方もそのようです。
石碑への情熱
この本のまえがきには、以下のように書かれています。
石碑の所在地をいろいろな手段で調べ、所在地へ行く交通路を選び、カメラや地図やメモ帳を準備して床につく。早起きして出発する。わくわくしている。石碑の前に立つと心がはずむ。顔はいつもの仏頂面でも。
これを読むだけでも、著者が石碑にかなりの情熱を注いでいることがわかります。
本の構成は、まえがきも含めて15章となっています。
内容は、京都を中心に様々な石碑を解説した内容となっているのですが、紹介されている石碑が何ともマニアックです。
例えば、「西川耕蔵招魂碑-京の仇を大津で」の章は、そもそも西川耕蔵が誰なのか、ほとんどの方がわからないことでしょう。私も読むまでは、誰なのかわかりませんでした。
西川耕蔵は、幕末に新撰組が幕府に逆らう浪士たちを襲撃した池田屋事件で捕縛され、翌年に処刑された人物です。
著者は、三井寺で西川耕蔵招魂碑を見つけた後、徹底的にこの人物について調べています。
石碑の内容を訳すのはもちろんのこと、これを建てた西川太治郎が西川耕蔵とどう関係があるのか、インターネットだけでなく、国会図書館関西館にも訪れて調べあげるほどの力の入れようです。
このように著者は、石碑を見つけると徹底的にその石碑とそれに関係することを調べており、その内容が「京都石碑探偵」に掲載されています。
なので、この本には、誰でも知っているようなことはほとんど書かれておらず、その内容はとても新鮮でした。
どのような方に向いている内容か
この本は、保元の乱、応仁の乱、本能寺の変、山崎の戦いなど歴史上の有名な事件の跡地を知りたいという方には不向きです。
こういったことが知りたい方は、他の書籍を探した方が良いでしょう。
また、石碑の難しい文章の読み方について解説されているわけではないので、石碑の文章が読めるようになりたいという方にも適していません。
では、「京都石碑探偵」を読むのに適しているのはどのような方なのかというと、有名な史跡はほとんど見てしまったという方でしょう。
先にも述べましたが、この本の内容はかなりマニアックなので、一般的な京都の観光ガイドに飽きてしまった方には、かなり新鮮だと思います。
もちろん誰が読んでも問題ないですが、購入するなら、自分の目的にあっているかどうか、じっくりと考えた後にした方が良いですね。
比較的、幕末の史跡について多くのページを割いているので、幕末好きの方にはおすすめですよ。
最後にこの本で知った豆知識をひとつ紹介しておきます。
石碑の題名は、右から横に向かって書かれていることがよくあります。
例えば、当ブログの名称の場合、以下のようになります。
「れこれあ行旅光観都京」
実は、石碑に書かれている題名は、右横書きではなく、1行1字の縦書きとみなすべきだと著者は主張しています。
これについては、題名が1行2字の縦書きとなっている石碑も紹介して説明されているので、説得力がありました。
興味がある方は、一度、ご覧になってみてください。