中央卸売市場第一市場は西鴻臚館跡地にある

京都市下京区に中央卸売市場第一市場があります。

中央卸売市場第一市場は、野菜、果物、生鮮水産物、加工水産物といった生鮮食料品などを扱う市場です。

日本国内はもちろんのこと海外からの生鮮食料品も扱っている公設の市場で、適正な価格付けをして京都市民の台所に速やかに送る役割を果たしています。

この中央卸売市場第一市場が建つ地は、平安時代には西鴻臚館(にしこうろかん)がありました。

平安時代の迎賓館

京都駅から七条駅を西に15分ほど歩くと、中央卸売市場第一市場の大きな建物が見えてきます。

中央卸売市場第一市場

中央卸売市場第一市場

そして、建物の南側には西鴻臚館があったことを示す京都市の説明書が設置されています。

西鴻臚館跡の説明書

西鴻臚館跡の説明書

鴻臚館は、朱雀大路を挟んで東と西に設置されていた外国使節を接待、宿泊させる迎賓館としての役割を果たしていました。

東西の鴻臚館跡の間には、現在、JR山陰本線の線路が南北に敷かれています。

鴻臚館は、平安時代前期には渤海(ぼっかい)使節団の来朝に際して用いられており、詩文の交歓が行われていたそうです。

しかし、鴻臚館を2つ維持するのが負担となったため、東鴻臚館は承和6年(839年)に廃止されます。

さらに渤海国が滅亡した後は使節団の来朝も途絶え、西鴻臚館も使用されなくなり、12世紀には個人の領となったそうです。

西鴻臚館跡の発掘調査では、平城京や長岡京からの搬入瓦や銭貨の他に土師器(はじき)、須恵器(すえき)、輸入陶磁器など多数の遺物が出土したとのこと。

源氏物語ゆかりの地

西鴻臚館跡は、紫式部の代表作「源氏物語」の「桐壺」にも登場します。

桐壺帝が来朝して鴻臚館に滞在の高麗(こま)の相人(そうじん)のもとへ素性を隠して光源氏を遣わし占ってもらった場面がそれで、准太上天皇(じゅんだじょうてんのう)になるとの予言を得ます。

西鴻臚館は、平安時代の迎賓館だったので、きっと当時は華やかな建物だったのでしょうね。

現在では、中央卸売市場第一市場になっていますが、海外からの生鮮食料品がここに運ばれているのは、何かの縁を感じます。

そして、中央卸売市場第一市場で取引された生鮮食料品が、京都のレストラン、ホテル、旅館などで調理され、海外からお越しの多くの旅行者の方の口に入るのですから、今も海外からのお客さんをもてなすために欠かせない存在であり続けていると言えそうです。

西鴻臚館跡地は、時代が変わっても、人々の交流のために大切な役割を果たし続けています。

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