もうひとつの京都を知る

京都は、日本の中でも有数の観光地です。

そのため、多くの京都に関するガイドブックが出版されており、そこには有名な観光名所が写真付きでいろいろと紹介されています。

旅行者の方は、これらのガイドブックを片手に京都を散策すると、大きなハズレはないでしょう。私も京都府に住んでいますが、散策の際は、これらのガイドブックをよく参考にします。

ただ、ガイドブックに掲載されている観光名所は、京都の大まかな表情を紹介しているものが多いので、もう少し深く京都を知りたい時に適していないこともあります。

「もっと深く京都を知りたい」

そう思った時に読んでいただきたい本を今回の記事では紹介します。

知らなければ見逃してしまう

その本は、「タイムトラベル もうひとつの京都」です。

この本は、30年間、京都で生活してきた著者が、その地域に住む人しか知らない名所を紹介したもので、京都に観光に訪れても知らなければ見逃してしまうものばかりです。

なので、金閣寺や銀閣寺といった有名な観光名所を造ったのは誰で、いつ建てられたのかといった歴史の教科書やガイドブックに掲載されていることは一切書かれていません。

目次の章立ては、「もうひとつの平安京」「もうひとつの洛東」など、必ず「もうひとつの~」となっており、紹介されている内容は、全て雑学的なものです。

紹介されているものは、どれも1ページから2ページほどの短い内容なので、電車の中や病院の待ち時間など、ちょっとした空き時間で読めるものばかりです。

また、ページ数は200ページ程度と少なめなので、苦痛に感じることなく、あっさりと読み切れます。

思わず「そうだったんだ」とうなずいてしまう

では、本の内容をいくつか紹介しましょう。

小野篁は六道珍皇寺から地獄に赴いた!?(34ページ)

平安時代の官僚であった小野篁(おののたかむら)が、地獄の閻魔大王に会いに行くために六道珍皇寺の井戸を使ったことが紹介されています。

頭が良かった篁が、嵯峨天皇から「子」の字を12個書いたら何と読むかといった謎かけに即答したエピソードなども併せて記述されています。

この謎かけは、本に答えが載っていないので、以下に記しておきます。

「猫の子の子猫、獅子の子の子獅子」

恋愛成就の神社に「呪いの木」がある理由(65ページ)

清水寺の境内に建つ縁結びの地主神社(じしゅじんじゃ)にある祈り杉が紹介されています。

祈り杉は、またの名を「呪い杉」といい、江戸時代には丑の刻参りが行われていたそうです。

ここでは、同じ地主神社にある「おかげ明神の社」も紹介されています。

かつて京都に”居候”していた東京の大学とは?(152ページ)

東京の有名私立大学の分校が京都にあったことを紹介しています。

その私立大学は、慶應義塾大学です。

なぜ、京都に分校があったのか、その理由が書かれています。

京漬物の「すぐき」-どのように保護されているのか?(217ページ)

京都の3大漬物のひとつである「すぐき」の発祥地が、上賀茂だということを紹介しています。

ここで興味深いのが、すぐきと同じ漬物である「たくあん」が料理屋で何枚出されるかが記されている部分です。

答えは2切れなのですが、なぜ、2切れになったのかが書かれています。

上に紹介したものだけでなく、どの内容も思わず「なるほど」とうなずいてしまうものばかりです。

お友達にちょっとしたクイズとして出題するのも良いのではないでしょうか。

ただ、この本には残念なところがひとつあります。

それは、紹介されている史跡や名所の地図が掲載されていないことです。

一度、訪れたところなら良いのですが、行ったことがないところの場合、ネットで検索するなどの手間がかかってしまいます。

本のタイトルに「もうひとつの京都」と書かれているように、まずは一般的な京都のガイドブックを1冊購入した後、「もうひとつのガイドブック」として読むのがおすすめですよ。